第十三話

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 まるであの時の映画のワンシーンのように。  オミオツケさんは、呆然とその光景を見つめる。  客と店員達は何が起きてるのか分からず悲鳴を上げる。  変化が起きる。  エガオとカゲロウを模したみそ汁が溶けるように混じり合っていく。官能的に艶かしく動きながら丸い球状へと形を成したかと思うと再び表面を波立たせ、男性の胸像のような姿へと変わる。  オミオツケさんの目が震える。  一度を形を成したみそ汁が二回変化したことなんていままでなかった。  しかも……その姿が……。 「レンレン君?」  それは見間違いのないレンレンの顔であった。  レンレンの顔を模したみそ汁は優しく微笑むと胸の部分からこぼれるように汁が流れるように溢れ、腕の形になると、そっとオミオツケさんの頬に触れる。  その感触はとても(ぬる)く、気持ち悪い。  それなのにオミオツケさんは、レンレンを模したみそ汁から目を反らすことが出来ない。  レンレンを模したみそ汁の唇が小さく動く。  その口から声は発しない。  しかし、動きでオミオツケさんと囁いてたことが分かった。  レンレンを模したみそ汁の顔がゆっくりとオミオツケの顔に近づく。
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