第十三話

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 オミオツケさんは、叫びながら言ってレンレンの顔の上に乗った皿を退かして、絶句する。  レンレンの顔は、真っ赤に染まっていた。  血ではない。  紅潮でもない。  顔中に蕁麻疹のような出来物が無数に浮かんでいる。 「レンレン……君?」  オミオツケさんは、何が起きたか分からず呆然とレンレンを見下ろす。 「アナフィラキシーショックだな」  いつの間にかオミオツケさんの隣に高齢の男性がいた。孫と妻と一緒に和食を食べていた男性だ。 「私は、医師だ。安心しなさい」  男性は、オミオツケさんに優しく言うとレンレンの喉元に指を当て、呼吸音を確認する。 「発作を起こしてる、呼吸もうまく出来てない」  男性は、オミオツケさんを見る。 「エピペンはあるのかな?」  男性は、優しく声をかける。  エピペン⁉︎  しかし、オミオツケさんは混乱して何を言われてるか分からず、震えて首を横に振るだけだった。  男性は、ふうっと息を吐き、店員に救急車を呼ぶよう指示した。  オミオツケさんは、何も出来ないまま、考えられないまま、苦しみ続けるレンレンを見ているしかなかった。
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