第十五話

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「このパンケーキは確かに美味しいとは思いますが食感や風味はやはり本物とは違います。生地の甘みもどちらかと言うと淡白です。まだまだ本物には敵いません」  そう言って女性は頭を下げる。  レンレンと両親は驚く。 「これが今の私に提供できる精一杯のものです。今はこれでお許しください。そして次いらした時にはもっと美味しいパンケーキが届けられるよう精進致します」  そう告げた女性の目はあまりにも真っ直ぐで、幼いレンレンの心を強く打ち付けた。  そしてこの出会いがレンレンのその後の人生を大きく変化させていった。 「それからレンレン君はびっくりするほど元気になってったらしいよ」  文系女子は、レンレンから聞いたことを思い出しながら説明する。  女性は、都内の大学で管理栄養士として働いていたと言う。両親が高齢になったのを機に戻ってきて農家を継ぎ、以前からやりたかったオーガニックとアレルギーのある人でも食べられるレストランを始めた。  レンレン家族は、女性と交流を持ち、母親は女性とレンレンのアレルギーの相談しながら薬に頼らなくても栄養を摂ることのメニューを考案し、レンレンに提供した。
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