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第十七話
オミオツケさんは、教室には戻らなかった。
いや、戻れなかった。
壊れた玩具箱から溢れるように飛び出してくる感情の波を抑えることが出来ず、そのまま女子トイレの中に飛び込み……大声で泣いた。
「なんで……なんで……」
なんであんなに優しいの⁉︎
あんなに酷いこと言ったのに!
冷たい態度を取ったのに!
自分のためにやってくれたことを全て否定したのに!
「なんで……なんで……」
これじゃあ……これじゃあ……。
「レンレン君のこと忘れられない……」
自分は、レンレンと一緒にいちゃいけないのに……。
一緒にいる資格なんてないのに……。
今度こそレンレン君の夢を……命を奪っちゃうかもしれないのに……。
頭の中をレンレンの顔が埋め尽くしていく。
優しく、和やかに、オミオツケさんと呼んでくれる顔が過っていく。
「ダメよ……」
オミオツケさんは、自分に言い聞かせる。
「忘れるのよ。彼のことを」
彼と自分はなんの関わりはない。
今後も何の関わりも持たない。
自分と彼は単なる同級生。
それ以上でもそれ以下でもない。
みそ汁なんて飲めなくていい。
飲む必要なんかない。
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