第十七話

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 もう……一生みそ汁なんてどうでもいい。  忘れるんだ。  いつものように。  何も変わらずに過ごすんだ。  クールに……クールに……クールに……。  オミオツケさんは、大きく深呼吸し、涙でくしゃくしゃになった顔をトイレットペーパーで拭く。  そしてペーパーをトイレの中に入れて流す。  心から溢れた全ての感情と一緒に全て流す。  トイレから出るとオミオツケさんの顔はいつものクールで知的な表情へと戻っていた。  鏡を見てもいつも通りだし、クラスに戻って教師に「お腹の調子が悪くて……」と言い訳した時も、何事もなかったように授業に参加し、設問を解き、質問に答えた時もいつもと変わらないクールで知的なオミオツケさんだった。  ただ、文系女子とスポーツ女子だけは心配そうに彼女のことを見ていた。  全ての授業を終え、生徒会の用事も済ませ、帰路に着こうとしたオミオツケさんの目は自然と食堂の方を向いていた。  食堂の……恐らく厨房のある部分の窓に明かりが付いていた。  レンレンがいる。  レンレンがみそ汁を作って自分を待っている。  今日は何をするつもりだったんだろう?
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