第十七話

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 母親と妹が心配してドア越しに声をかけてきたが「ちょっと一人になりたいの」と力なく言うと母親も妹も何かを察したようにドアから離れていった。  オミオツケさんは、枕に顔を埋める。  このまま窒息してラノベのようにどこか異世界に転生出来ないかな、と本気で考える。  もし、転生出来たらその時はどんな能力もいらない。  その変わりにみそ汁を普通に飲めるようにして欲しい。  どんなみそ汁でも、どんな環境でも、どんな人とでも普通にみそ汁が飲めるようにして欲しい。  そして彼と普通に出会わせて欲しい。  何の縛りもなく、普通の同じ年の男の子と女の子として彼と出会わせて欲しい。  でも、そんなこと叶いっこない。  異世界転生なんてない。  枕に顔を埋めたくらいで窒息なんてするわけない。  そしてみそ汁が普通に飲めるようになるなんてあり得ない。  そんな非現実(ファンタジー)なんて起きるわけがないのだ。  ……お腹空いた。  オミオツケさんのペタンコなお腹がグゥゥゥと音を立てる。  そういえばお昼のお弁当を食べてから何も口に入れてない。  最近は何かあるごとに食べていた気がする。
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