第十七話

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 アズキマフィン、コーンスープ、コンソメスープ、お吸い物、フレンチトースト、そして……。 「みそ汁……」  オミオツケさんの口にレンレンの作った甘くて深みのあるみそ汁の味が蘇る。  二度と味わうことのないあの芳醇な味を思い出し、涙がうっすらと零れる。 「レンレン君……」  会いたいよぉ……。  その時だ。  アニメ版エガオで笑う時の主題歌のメロディが耳に届く。  電話だ……。  オミオツケさんは、重く、空腹に飢えた身体を起こすと面倒臭いと思いながらも鞄からスマホを取り出し、電話の相手を確認する。  スポーツ女子だ。  SNSのやり取りはしょっちゅうしてるが電話をかけてきたのは初めてではないだろうか?  オミオツケさんは、訝しく思いながらも電話に出る。 『もしもし、美織?』 私のスマホなんだから当然だろ、と思いながらもオミオツケさんは「そうだよ」と答える。 「どうしたの?電話なんて珍しいじゃん」 『そんなこと言ってる場合じゃないの!』  電話越しのスポーツ女子は苛立ち、焦ってる様子だった。  元々、大人しい方ではなく、言いたいことは言ってくるタイプだがこんなに焦ってるのは珍しい。
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