第十八話

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 こんなに感情のままに人に向かって叫んだのは人生で始めてかもしれない。クールで知的な印象が付いてからは両親にすらここまでぶつけたことはなかったかもしれない。  それでも叫ばずにいられなかった。押さえることが出来なかった。  レンレンは、オミオツケさんの叫びを、怒りを殴るように()つけられながらも何も言わなかった。  ただ、悲しそうな表情だけを浮かべ、オミオツケさんの怒りの声を聞いていた。 「もういいんだよ!もう私のことなんて忘れていいんだよ!」  オミオツケさんは、小さな手を握りしめて何度も何度も床を叩きつける。 「みそ汁なんて飲めなくったって良いんだよ!そんなこと忘れて自分の夢を追いかけてよ!命を大事にしてよ!」  オミオツケさんは、泣きながら叫び、訴える。  レンレンは、悲しげな顔でじっと泣き叫ぶオミオツケさんを見る。  そして……。 「いやです」  レンレンの発した短く、小さく、そして強い言葉にオミオツケさんは驚く。 「なんで……俺の夢の為に……命の為に……オミオツケさんにみそ汁を飲ませるのを諦めないといけないんですか?」  レンレンの顔はいつもと同じ和やかだった。
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