第十八話

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 しかし、そこに笑みはなく、静かな怒りだけが熱のように発せられてた。 「だって……私のせいでレンレン君は死ぬところだったんだよ……」 「そんなの不可抗力でしょう」  レンレンは、吐き捨てるように言う。 「ただ運が悪かっただけ。オミオツケさんのせいでも何でもありません」 「でも……私と一緒にいなかったらあんなこと……」 「アレルギーで発作を起こすことなんて今に始まったことじゃありません。それこそ生まれた時からずっとずっと付き合ってきたんです。そんなことで危ないから俺は何もするな、箱庭の中で生きろ、そう言うんですか?」  オミオツケさんの目が震える。  レンレンは、きつく目を細め、鼻の頭に皺を寄せる。 「生きていれば怪我をする、病気をする、嫌なことだってたくさんある、考えたこともない悲惨なこともあれば不思議なことだってたくさん起きる……そんなことに一々動揺してたら夢なんて追えないし……」  レンレンは、じっとオミオツケさんを見る。  その目から怒りが消え、優しさと別の感情が浮き出る。 「……人を好きになることなんて出来ない」  涙に濡れたオミオツケさんの目が大きく開く。
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