第十九話

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 分かったのは……あの事故の後、そしてレンレンのアレルギーの話しを二人から聞いた後だ。 「レンレン君が好きだから……大好きだからもう一緒にいちゃいけない……そう思ったの。貴方をこれ以上不幸にしちゃいけないって……」 「逆ですよ」  レンレンは、はっきりと強い口調で否定する。  オミオツケさんは、顔を上げる。  レンレンは、優しい、しかし強い眼差しでオミオツケさんを見る。 「オミオツケさんがいるから俺は幸せなんです」  その瞬間、オミオツケさんの心に無数の花が咲き乱れる。  みそ汁の造形物たちが嬉しそうに二人を見下ろす。 「オミオツケさん……俺を見て下さい」  レンレンは、彼女の手を優しく包み込む。 「みそ汁じゃなくて俺を……みそ汁と同じくらい、いやそれ以上に俺を見て下さい。想ってください」  真剣な言葉。  強い眼差し。  そして温かい手の温もり。  その全てからレンレンの気持ちが伝わってくる。  オミオツケさんの唇が小さく震える。  みそ汁の造形物たちの動きが止まり、溶けるように形が崩れ出す。 「俺は……オミオツケさんが好きです」  オミオツケさんの心臓が大きく高鳴る。
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