最終話

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 ぼやけた頭が弾けた。  自分の手に添えられた母親の手が自分の手に、自分の手がオミオツケさんの手に変化して見えた。  レンレンの頭に過ったのはもう一週間以上も前、オミオツケさんに目隠しをしてみそ汁を飲む特訓をした時の映像。  みそ汁の器を持って動揺するオミオツケさん、暴れて(オーガ)の形になろうとしているみそ汁、ダメだったか、と思いながらも励ますレンレン。  そのお陰で少しずつ落ち着いていった彼女は自分に言った。  飲ませて欲しい、と。  レンレンは、 戸惑いながらも彼女の手に自分の手を添えて、口まで運ぶと、彼女はゆっくりと飲むことが出来たのだ。  その時は成功した喜びでそれ以上のことは考えられなかった。  しかし、病気で緩んでしまった頭が一つの仮説を立てた。  一緒に飲めばいいのではないか?  彼女の深層心理、つまり意識をみそ汁以外に向けされる、一緒に飲む相手のことに集中させれば飲めるのではないか?、と。  そしてその仮説は見事成功した。  レンレンに手を添えられて、レンレンのことに意識を向けた彼女は見事、みそ汁を飲むことが出来た。  出来たのだが……。    視線が痛い。
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