最終話

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 レンレンは、大きな身体を米粒のように小さく縮める。  十二時四十五分。  今までなら午後の授業に間に合うように食堂の片付け終え、厨房おばちゃん達に挨拶をしてから退出する時間だった。  しかし、現在は……。 「レンレン君、ちゃんと持ってよぉ」  オミオツケさんが上目遣いでレンレンを見る。  甘えた猫のようにキラキラと目を輝かせて。 「はっはい」  レンレンは、緊張に固まった身体をぎこちなく動かしながら返事する。  もう二人の席と言っても過言ではなくなった二人席。  レンレンとオミオツケさんは向かいあうように座りながらアツアツのみそ汁をお互いの手を重ねて持っていた。  まるで共同作業をするように。  オミオツケさんは、クールで知的な印象なんてどこかに忘れてきたかのように可愛らしく微笑み、レンレンは恥ずかしさに顔を俯かせる。  そんな二人を厨房のおばちゃん達は微笑ましく、男子生徒は妬ましく、女子生徒は羨ましく、スポーツ女子と文系女子は何とも言えないような微妙な視線で見ていた。
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