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奇跡は、あっても幻想はない。
それがレンレンが十七年と言う人生で、いやこの世で生きる大半の人間が悟ることだ。
運命的な出会いや夢へ向かうための道標、そして命救われるような経験と言った奇跡は偶然のような確率でも必然して起きることはある。
しかし、空を舞う竜に出会う、トナカイのソリを引いたサンタクロースに会う、科学では照明出来ないような不可思議現象なんて言う幻想が現実として起きるはずがない。
それだからこそゲームも小説も漫画も面白いのだ。
幻想は現実では起きない。
それが世界の常識……のはずだった。
ついさっきまでは……。
レンレンは、呆然と食堂のテーブルと床に散らばった茶色い汁とワカメの残骸を見る。
その真向かいに座る小柄で美しい、冷めた目をした少女を見る。
少女は、イメージ通りの冷めた声でぼそりっと言う。
「これが私のみそ汁が飲めない理由よ」
そう言って彼女は自虐的に笑う。
レンレンは、何度も何度も瞬きさせる。
「なに……」
レンレンは、呆然と呟く。
「このファンタジー……?」
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