第一話

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 奇跡(ミラクル)は、あっても幻想(ファンタジー)はない。  それがレンレンが十七年と言う人生で、いやこの世で生きる大半の人間が悟ることだ。  運命的な出会いや夢へ向かうための道標、そして命救われるような経験と言った奇跡(ミラクル)は偶然のような確率でも必然して起きることはある。  しかし、空を舞う竜に出会う、トナカイのソリを引いたサンタクロースに会う、科学では照明出来ないような不可思議現象なんて言う幻想(ファンタジー)が現実として起きるはずがない。  それだからこそゲームも小説も漫画も面白いのだ。  幻想(ファンタジー)は現実では起きない。  それが世界の常識……のはずだった。  ついさっきまでは……。  レンレンは、呆然と食堂のテーブルと床に散らばった茶色い汁とワカメの残骸を見る。  その真向かいに座る小柄で美しい、冷めた目をした少女を見る。  少女は、イメージ通りの冷めた声でぼそりっと言う。 「これが私のみそ汁が飲めない理由よ」  そう言って彼女は自虐的に笑う。  レンレンは、何度も何度も瞬きさせる。 「なに……」  レンレンは、呆然と呟く。 「このファンタジー……?」
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