第一話

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 時は昨日に遡る。  高校の校庭の隅にその学生食堂は点在していた。  普通、学生食堂と言うと校舎の中にあるものが一般的だが、高校の初代校長、つまり創立者が育ち盛りの生徒達にたくさん食べて、授業の疲れを癒してほしいと願い、校舎から切り離した場所に建てた。運営もNPO法人に委託し、高校とは切り離した空間として学生の憩いの場としている。  その考えは良い方向に動き、お昼時の学生食堂はいつも賑やかしい。  駅前やオフィス街にある食堂やファミレスの平日の混み具合がどんなものかは知らないがこの学生食堂の賑わいだって決して劣ってはいないはずだと赤木蓮ことレンレンは思っていた。  身長189センチ。  出会う人出会う人にバスケか格闘技をやってるだろうと勘違いされるような恵まれた体格をしたレンレンは今日も制服のブレザーを脱ぎ、白いワイシャツの上に紺色のエプロンと短く刈り上げた黒髪に三角巾を巻いて厨房で調理師のおばちゃん達と肩を並べて働いていた。
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