第二話

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 指を奥まで突っ込んでも熱くなかったみそ汁が沸騰するように激しく泡立つ。  それだけではない。  まるで激しく振られた炭酸のように立ち昇り、膨れ上がっていく。  レンレンは、あまりにも現実離れた光景に目どころか心も奪われる。  しかし、変化はそれで止まらない。  高く昇り、膨れ上がったみそ汁は飴細工のように(うね)り、歪み、形を形成していく。  そして……それは茶色い汁にワカメの鱗と(ひれ)の張り付いた鰹のような大きな魚になった。  レンレンは、驚きのあまり声どころか息を吐くのも忘れてしまう。  魚は、ワカメの鰭を羽のように震わせながら食堂の中を気持ちよさそうに遊泳する。  そして自らが飛び出した器を尾鰭で弾くとパンっとその身も弾けてテーブルと床の上に飛び散った。  それはまさにみそ汁の器が倒れて中身が飛び散ったような無惨な光景だった。  レンレンは、呆然とみそ汁の魚の残骸を見る。 「これが……」  オミオツケさんがぼそりっと言う。 「これが私がみそ汁を飲めない理由よ」  そう言って彼女は自虐的に笑う。  レンレンは、何度も何度も瞬きさせる。 「なに……」
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