第三話

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 そこまで確認して両親が出した結論は、器の持ち方が悪かったのだろう、という簡単なものだった。と、いうかそれ以上の答えは出なかった。  二人は、オミオツケさんを落ち着かせると改めて離乳食の初めての一口(ファースト・バイト)を再開する。  そしてそれがオミオツケさんとみそ汁の因果を決定づけた。  母親がおじやの入った器を近づけた瞬間、米と豆腐と汁が震えだす。  両親の目が驚愕に飛びださんばかりに剥ける。  米と豆腐、そして汁はそれぞれが意思を持ってくかように動き、くっつき、まとまり、野球の球の大きさの球状にまとまる。  そしてゆっくりゆっくり宙に浮き上がり、オミオツケさんの視線を超え、両親の頭を超え、電灯の近くまで浮かび上がった瞬間、みそ汁の球はパァーンッと弾けた。  花火のように。  大輪となって米と豆腐と汁を飛ばした。  あまりにも理解出来ない現象に両親の思考は止まり、オミオツケさんは、両手を叩いて喜んだ。 「それから父と母は直ぐに近所の神社やお寺を回ったらしいの。ひょっとしたら呪われてるんじゃないかって危惧して」  オミオツケさんは、綺麗に拭いたテーブルに座って神妙に話す。
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