第七話

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 そんなこと考えもしなかった。  まさか、人生最大の歓喜とも言える場面がさらに絶望を膨らませることに繋がるだなんて……。  力を落とすオミオツケさんにレンレンは笑いかける。 「その為の特訓ですよ」  そう言ってハチマキをたたみ直す。 「オミオツケさんにはみそ汁を見ても飲んでも動じない心作りをしてもらいます」 「心作り?」  オミオツケさんは、首を傾げる。 「はいっ」  レンレンは、小さく頷く。 「ここに用意したみそ汁を含めた五つの汁物を目隠しした状態で交互に飲んでいってもらいます。いつみそ汁が来るか分からない中、みそ汁の味を感じても飲むことが出来たら成功です」  つまりみそ汁当てゲームか。  しかもロシアンルーレット的な。  オミオツケさんは、思わず唾を飲むこむ。 「まずは飲んでも動じない。次に匂いを嗅いでも動じない、そして見ても動じない。子どもがピーマンやトマトを克服するのと一緒。難しいことじゃありません」  子ども……。  自分は、好き嫌いする子どもと一緒なのか……。  それに子どもがトマトやピーマンに触れてもファンタジーになんて起きないだろう。
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