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そして口がぱっと開いた瞬間、顔中の筋肉が至福に緩んだ。
「美味しい……」
文系女子は、ぽそっと呟き、震える目でレンレンを見る。
「とっても……とっても美味しい!」
文系女子の顔が華やぎ、目にはうっすらと涙が溜まってる。
「これが……これがオムライスなんだね!」
文系女子は、喜びに震えていた。
彼女は、重度の卵アレルギーである。
食べるどころか口内に触れただけで蕁麻疹と呼吸苦、最悪死に至ることすらある。
彼女にとって卵はまさに毒そのもの。
食べるなんて夢のまた夢。
そんな彼女の夢。
それがオムライスを食べることだった。
子どもの頃からずっと憧れていたオムライスを。
「喜んでもらえて幸いです」
レンレンは、にっこりと微笑む。
「レンレン定食……どうぞお楽しみください」
レンレンは、ゆっくりと頭を下げた。
レンレン定食。
それは様々な理由で食べたい物を食べることが出来ない生徒達の為の夢の定食。
彼は、そんな生徒達の夢を叶えるべく学生食堂を手伝っていた。
「これって……卵じゃないんだよね?」
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