第八話

3/8
前へ
/174ページ
次へ
 レンレンは、それを"意外と不器用なんだな"くらいにしか思わず、口元まで運ぼうと彼女の手を握ったまま動かす。  オミオツケさんもそれに気付き、さらに舞い上がって止めようとするも時既に遅し。  お椀の端が唇に触れて、中の汁が流れ込んでくる。  とろりっとした濃厚な甘味が舌に絡みつき、喉の奥に入り、口の端を溢れる。  これは……。  オミオツケさんは、喉を鳴らしてから口を開く。 「コーンスープ?」  オミオツケさんは、恐る恐る訊く。 「正解です」  レンレンは、嬉しそうに言う。  顔は見えないがいつもの和やかな笑みを浮かべてるであろうことが想像ついた。 「良かったです」  レンレンは、ほっとしたように言う。 「なんか凄い動揺してたからみそ汁と勘違いして反応したらどうしようか、と思いました」  そんなに動揺してたんだ……。  オミオツケさんは、自分の頬が熱くなり、心臓がバックン、バックンと高鳴るのが耳の奥から響いてくる。  そこに更なる追撃が来る。  オミオツケさんの口元に柔らかい感触が伝わる。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加