第八話

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 敏感になっていたオミオツケさんの感覚がそれがタオルハンカチであることを伝え、更に丁寧に拭かれていることを告げた。  レンレンに。 「………………っ!」  オミオツケさんは、声にならない悲鳴を上げる。  その声に驚き、レンレンは反射的に手を引っ込める。 「な……なななな……何を⁉︎」  オミオツケさんは、もはや響めきとしか言えない声を上げる。 「い……いや……その……」  レンレンは、手に持ったタオルハンカチとオミオツケさんを交互に見る。 「口元が汚れてたから……オミオツケさん見えないから気づかないかと思って……」 「言ってくれれば拭けるから!」  そう叫ぶとオミオツケさんは手探りで自分の鞄からハンカチを取り出して乱暴に口元を拭っていると脳裏に昨日のスポーツ女子とレンレンのやり取りが過る。 「ねえ、レンレン君って……タラシなの?」 「はいー⁉︎」  オミオツケさんの言葉にレンレンは素っ頓狂な声を上げる。 「だって……妙に女の子の好きなもの分かってるじゃん。きめ細やかで親切だし……それにやたらと気安く触ってくるし……」  最後の方は恥ずかしくて声が尻すぼみになる。
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