第九話

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 手のひらが汗で濡れていくことが分かる。  オミオツケさんも自分がもの凄く大胆なことを言ってることは分かってる。  でも、負けたくない。  失敗したくない。  妹の為にも……。  そして……。 「……わかりました」  肩に置かれたレンレンの手が離れる。  その次の瞬間、お椀を握るオミオツケさんの手にレンレンの手が添えられ、自分の手をゆっくりと動かしながら口元に向かっていく。  再びオミオツケさんの心臓が激しく鳴り響き、お椀の中が暴れ出す。 (お願い……落ち着いて……私の心……)  オミオツケさんは、自分の心に願った。  お椀の端が唇に触れる。  甘く、深い味噌と出汁の味が舌を通り、喉の中に流れ込む。  ごっくん。  オミオツケさんの喉が大きく音を鳴らす。 「ぷはあ!」  オミオツケさんの口から大きな息が漏れる。  レンレンの手とお椀がオミオツケさんの手から離れる。  オミオツケさんは、慌てた目隠しを外す。  LEDライトの光が目を焼き、思わず両手で覆う。 「みそ汁は⁉︎」  オミオツケさんは、両手で顔を覆いながらレンレンに訊く。  しかし、レンレンは答えない。
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