第九話

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 その代わりにテーブルの上に固い何かを置く音が聞こえる。  オミオツケさんは、両手を顔から離し、ゆっくりと目を開ける。  テーブルの上にあったのはみそ汁の入ったお椀。  その中身は……半分以上減っていた。 「成功です」  レンレンが優しい口調で言う。 「おめでとうございます。オミオツケさん」  レンレンは、大きな微笑を浮かべる。  オミオツケさんは、信じられないと言わんばかりに目を大きく震わせ、お椀を見て、レンレンを見る。 「泡吹き出してエガオが笑う時に出てくる(オーガ)の姿になり始めた時はどうしようかと思いました」  そんなことになってたのか……オミオツケさんは呆然と半分になったみそ汁を見る。 「でも、流石ですオミオツケさん。見事、ゲームクリアです」  そう言ってレンレンは笑う。  クリア……ゲームクリア。  その言葉を聞いた途端、現実感がオミオツケさんを満たす。  自分は……またみそ汁を飲むことが出来た。  そして……。 「お礼……」  オミオツケさんは、ぽそりっと呟く。 「えっ?」  レンレンは、小さく声を出す。  オミオツケさんは、冷めた目をレンレンに向ける。
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