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第十話
レンレンは、後悔していた。
レンレンたちが住む市の中心地とも言える港町の駅前は休日であることを差し引いても賑わい混んでいた。
見渡す限りの人人人。
カップルから家族連れ、大道芸にストリートミュージシャン、時期ハズレの選挙活動等、人の荒波に酔いそうになる。
レンレンは、いつもの学生服を脱ぎ捨て、母親に付き添って衣料量販店で購入した黒字のアーガイル柄のポロシャツと膝の破れたヴィンテージっぽいデニムを着てやってきたのだが……。
後悔した。
こんなに後悔したのは人生で初めてかもしれない。
レンレンは、短く切った髪に手を当てて自分の浅はかさを呪う。
「どうしたの?」
オミオツケさんが不思議そうに首を傾げてレンレンを見上げ、スマホで時間を確認する。
「私……時間通りに来たよね?」
オミオツケさんは、レンレンの態度に不安げな顔をする。
「大丈夫です……」
レンレンは、少し低い声で言う。
「まったく時間通りですから」
「それじゃあ、なんでそんな絶望って顔してるの?」
オミオツケさんは、レンレンの青ざめ、苦悩している顔を覗き込む。
レンレンは、慌てて顔を反らす。
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