第十話

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「私、何かした?」 「違います!」  レンレンは、慌てて否定する。 「じゃあ……何?」  オミオツケさんは、不満そうに頬を膨らませる。 「それは……」  レンレンは、言いかけたもののそれをどう口にすればいいか分からなかった。  一体、どう言えばいいのだ?  オミオツケさんが可愛すぎて目を合わすことが出来ないだなんてことを。  黒く、長いロングヘアを織り込むように結って三つ編みに、元々和的で綺麗な顔立ちなのに今日は薄い化粧を施して肌は輝き、目元は潤い、唇は艶めいていた。小柄な身体には季節らしいレースの水色のブラウスに長めの薄い花の刺繍の描かれた白いスカートを履いている。肩から下げた白地のポシェットも品がいい。  レンレンは、女性のファッションや化粧なんてとんと疎い。姉か妹でもいれば意識も出来たのだろうが一人っ子なのでそんな目利きなんて持ち合わせていない。  しかし、そんなレンレンでも思う。  可愛い。  可愛すぎて目を合わせられない。  だからこそ後悔した。  こんな男友達と出かける程度のお洒落しかしてこなかったことを……。  彼女と一緒にいるにはあまりにも不相応な自分を。
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