第十話

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 映画館では現在、二人の大好きなラノベ小説、エガオが笑う時の世界観を再現したコラボカフェがフードコートの一角で開催しており、映画を見た人限定で入ることが出来るようになっている。 「フレンチトーストは絶対に食べたいよね!」  オミオツケさんは、冷めた目を輝かせて言う。  フレンチトーストは、物語の主人公であるエガオが後に彼女の想い人になるキッチン馬車の店主カゲロウが初めて振る舞った料理。"こんな美味しいもの食べたことない"と泣きながら言わせた一品。それを忠実に再現したもので当然、一番人気ですぐに売り切れること必死のものだ。  当然、作品のファンであるレンレンも同じ想いなのだと思ったが……。 「俺は……アップルティーがいいですかね」  レンレンは、申し訳なさそうに眉を下に落としながら言う。  アップルティーもエガオの大好物の一つで物語の中核を成すメニューの一つではあるが……。 「フレンチトースト嫌い?」  オミオツケさんは、悲しそうに上目遣いでレンレンを見る。  悲しそうに潤んだ冷めた目にレンレンは頬を赤らめて視線を反らす。 「そう言う訳はないんですが……」
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