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とある店にだけは社長と一緒に顔を出しているのを複数回確認した。社長自ら加盟店を訪問するのは普通のことなのだろうか。
サラリーマン経験のない俺には想像するしかないが、異例だと思う。この店にはなにかあると直感し、聞き取りに臨んだ。
五十半ばのチョビひげおやじが相手をしてくれた。訊くと店長だと言う。ネクタイを締め、突き出た腹をベストに押しこんでいる。
ええ、遠藤さんに縁談ですって。まだ早いんじゃないですかネ、だって大学出たばっかりですヨ、あの子。はあ、相手さんのたっての希望なんですか。まあ美人だし、とんでもなく優秀だし、わからなくもないですけど。早いうちに婚約を取りつけておかないと、ほかの男に取られてしまうってお考えなのですかネ、お相手さんの親御さんは。
ああ、やっぱり。はっきりは言えないけど、けっこうな家柄からのお話ですか。
うーん。どうでしょうかネ。え、なにを悩んでるのかですって。まあ、いろいろと。遠藤さんが幸せになる邪魔しちゃいけないですからネ。私が話す気になったら話しますヨ。
あ、そうそう。縁談向けのいい話がありますヨ。あの子、T大なんですヨ。日本で一番難しい国立大学卒業してるんです。法学部だって言ってたかな。高卒で、四十超えてから一念発起してキクてつのチェーンに参加した私なんかとは大違いです。
でもね、うちはキクてつ加盟の第一号店なんです。喜久川原社長ご自身が、私の店の担当だったんですから。私と社長は、そのころからのつきあいですヨ。最古参なんですよネ、私、きくてつフードの。
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