告白したい!

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 恐る恐る営業部のフロアに足を踏み入れると、既に中村くんの姿があった。  途端にギュッと心臓を掴まれる。  ……どんな顔して会えばいいの。  いや、何事もなかったように挨拶するしかないんだけど。 「お、おはよう」  ぎこちなくも、どうにかいつものように声をかけることができた。  すると、中村くんは。 「……おはよう!」 「ホギャー!」  周りから薔薇が咲き誇るような麗しい微笑みに、目がやられそうになる。  なんというか、中村くんだけ光り輝いているように見えた。 「あれ? 顔色悪くない? ちゃんと眠れた?」  ナチュラルに頭を撫でられ、耳元で甘ったるく囁かれる。  とにかく距離が近い! そんな中村くんの異変を、周りの社員達も見逃さなかった。  ざわつく周囲に狼狽えて、すぐに中村くんから離れ後ずさる。  ……どういうつもり?  私を見つめる目はとろんとしていて、かなりの上機嫌だ。 「昼には外回りから戻ってくるから、待ってて。一緒に飯行こ」 「う、うん……?」  パァッと花が開くように嬉しそうに微笑むと、中村くんは手を振ってフロアから出て行った。 「………………」  ……何が起こったの? 「ちょっとちょっと亜依! 今のなんなの!? 彼氏オーラ全開じゃん!」  山ちゃんが興奮気味に私の肩を掴み揺さぶる。  私は白目を剥きながらこの状況を訝しがった。  彼氏オーラ全開。山ちゃんの言うとおりだ。  あんなの、勘違いするに決まってる!  いつもの演技? ……それとも。  中村くんが何を考えているかわからない。 「もしかして二人付き合い始めた!?」 「……違う」  ……一線を越えられなかったのに、どうして。  
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