告白したい!

5/9

577人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
「すっげー似合う! 可愛い!」  入園して早々に、アクセサリーショップに立ち寄った。  試着用の猫耳のカチューシャをつけた私を、中村くんは興奮気味に見つめる。 「これ俺買う! つけて!」 「ホントに?」  柄にもない行為すぎて恥ずかしい。  だけど嬉しそうに目を細める彼を前にしたら、断れなくて。  それに内心、可愛いと言ってもらえて嬉しかった。 「な、中村くんもつけてみて!」  絶対似合うし、可愛い姿も見てみたい。  そんな無茶ぶりにキョトンとする彼。  だけどすぐに笑顔に変わった。 「わかった。じゃあお揃いでつけよ」  ……嘘でしょ。彼がこんなことを言うなんて。 『マジで最悪。俺は着せ替え人形じゃねーんだよ。あー鬱陶しい。脱ぎてえ』  前に皆で来た時は、周りの女子達に勧められて被った帽子に裏で文句を言いまくっていたのに。 「どう?」  楽しそうに猫耳をつける中村くんが可愛くて、また胸が高鳴った。 「亜依確か絶叫系苦手だよな。あっちにゆるい乗り物ゾーンあるから行こ」 「うん……」  もう何年も前のことなのに、私が絶叫系苦手だってこと、覚えててくれたんだ。 『私苦手だから待ってるね。ついでにショーの整理券並んどく』  当時そう言って別行動しようとした私のこと、彼は追いかけてきてくれて。 『ちょっと俺も休憩。疲れたな。このまま二人で帰らない?』 『何言ってるの! 来たばっかりだよ!』  ガス抜きの為だってわかっていたけど、一緒にいてくれることが嬉しかったっけ。 「亜依、写真撮ろ!」  でもまさか、こんなふうに二人で手を繋いでここを歩くなんて思ってもみなかった。 「……中村くん、楽しそうだね」  いくつかアトラクションに乗った後、アイスを食べながら一息ついている時にふと思った。  長時間並んでいる時も、メルヘンなアトラクションに乗っている時も、アイスを食べている今も。  中村くんは至極上機嫌で、いつもの悪態なんてつかない。  そもそも本来だったら、こういう場所はあまり好きではないはずなのに。  意外にも中村くんは、本当はインドア派なのだ。 「楽しいよ」  彼は目をキラキラさせて微笑む。 「亜依と一緒なら、なんだって楽しい!」 「中村くん……」  そんなことを言ってくれるなんて。  胸がギュッと締めつけられて、アイスを味わえない。  ……もしかして今、気持ちを伝えるチャンスじゃない? 「中村くん、」 「アイスとけてるよ」 「え?」  指摘された通り、私のイチゴアイスは周りが液状化してコーンの縁から流れていく。  それが手につたうのを慌ててタオルで拭こうとしたその時。 「タオル汚れるよ」  そう言って私の手の甲を舐め始める中村くんに、心臓を掴まれて変な声が出る。 「ちょっ!」  あまりにも妖艶な仕草に、ゾクッと鳥肌が立ってしまった。  あの夜の愛撫が、一瞬にして蘇る。 「……夜まで待てない」  そう耳元で囁くから、くらりと目眩がした。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

577人が本棚に入れています
本棚に追加