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「嘘でしょ? 私だよ!?」
今まで何年間も一緒にいた、ガス抜き相手の私。
そんな対象として見るわけ……
「嘘じゃない。……かなり切羽詰まってる」
「ひゃ!」
ずいと迫られて、心臓が高鳴る。
まさか。中村くんが、私と……
「……でも、我慢する」
すぐに中村くんは私から離れて、ホッと胸を撫で下ろす。だけど同時にほんのりと寂しさを感じた。
「亜依は俺にとって大切な人だから、傷つけるような真似はしない」
大切な人……それって、どういう意味?
「水飲めば? ……なんか買ってくればよかったな」
努めて他の話に変えるように、冷蔵庫からペットボトルを取り出す中村くん。
恐る恐る彼の背後に近づいて、背中にそっと抱きついた。
彼の手からペットボトルが抜け落ちる。
「……亜依……?」
「……我慢しなくていいよ」
こんな台詞、私じゃないみたい。
だけど気持ちが溢れて止まらなかった。
「私、」
中村くんのことが好き。そう言いかけた瞬間、唇を塞がれる。
初めて触れた彼の唇は柔らかくて熱い。
まだ信じられなくて、だけどこの何年間もの片想いの日々が報われるような喜びに打ち震えて、目の奥から涙が込み上げた。
キスはどんどん深くなっていき、身体が弛緩して立っていられない。
ふらりと崩れ落ちそうになる私を彼は受け止めた。
見つめ合って、胸がはち切れそうに高鳴る。
「……ホントにいいの?」
とろんとした瞳で見つめられ、ドキドキしながら静かに頷いた。
「……ベッドいこ」
抱きかかえられてベッドに移動し、優しく仰向けに寝かされる。
私の上でバスローブを脱ぎ始める中村くんに息を呑んだ。
引き締まった身体は想像よりもガッチリとした筋肉質でセクシーだ。
ずっと一緒にいたから気づかなかったけど、彼はこんなにも大人の男性になっていたんだ。
彼の手がするりと私のバスローブも脱がしていく。
恥ずかしさのあまりぎゅっと目を瞑った。
「亜依、こういうのつけてるんだ」
こんなことになると思わなかったから、いつも通りの黒い無地の下着を着けていた。
激しく後悔する。普段からもっと色っぽいものを身につけておくべきだった。
「亜依らしくて可愛い」
そう言って私の肌にちゅっと音を鳴らして口づけていく。
くすぐったさに耐えられなくて、ビクビクと身体を弾ませながら情けない声を上げた。
「亜依……初めて?」
「………………」
恥ずかしすぎる。
だけど否定はできない。嘘をついたところで、この反応を見ればすぐにバレてしまう。
「ホント可愛い」
中村くんはにやりと笑って、また唇を奪った。
いつの間にか両手は指を絡められ、シーツに縫い付けるように押さえつけられていて身動きがとれない。
「そうだよね。俺とずっと一緒にいたんだもん。他の男知る余裕なんてないよね」
楽しそうに私の肌に指を滑らせる。
その動きは色っぽくて、こんな中村くん知らない。
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