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告白したい!
「あー。週末ヤリまくって疲れた」
────週明けの朝。
出勤前の女子トイレは、早くもヒートアップしていてえげつない。
「ああ。セフレいるんだっけ?」
「そう。絶倫すぎて身体もたん」
先輩の杉崎さん達の会話に聞き耳をたてながら、ゲッソリした顔にファンデーションを塗り足した。
……結局、あの後は二人で眠って、中村くんと一線を越えられなかった。
告白してないから、付き合い始めたわけでもない。
だから今日顔を合わせるのが気まずすぎる!
「美香、美人だしモテるのに彼氏作らないの?」
そんな声が隣から聞こえた。
杉崎美香さん。綺麗だし仕事もできるしで、中村くん同様営業部の高嶺の花と呼ばれている。
「セフレの方が楽でいいよ。束縛しないしさ」
会話が大人すぎて、聞いているだけで動悸がする。
やはり杉崎先輩はレベルが違う。
「セフレって、可愛いとかしつこく言ってくれるけど、絶対好きって言わないんだよね。そこがまた良し」
「………………」
そんな言葉に血の気が引いて、すっと身体が冷えていくのを感じた。
……中村くんもそうだった。
何度も可愛いと言ってくれたけど、好きだとは言われてない。
もしかして私って……
「ああ。でもさ、この人なら本気になってみたいって相手もいるよ」
「嘘! 誰!?」
杉崎先輩は麗しく微笑んだ。
「中村くん」
周りの女性達から歓声が上がる。
鏡の中の私は青ざめていて、うまく笑えなかった。
杉崎先輩が中村くんのことを?
そんなの、敵うわけないじゃないか。
「彼、可愛いよね。完璧に見えるけど、それを崩してみたいなって」
「さすか美香!」
「肉食ー!」
まずいことになってきた。
だけどとてもじゃないけど、「私も好きです」と名乗り出ることはできない。
「それにさ、私のセンサー反応しちゃったんだけど。……彼、絶対アソコでかいよ」
「…………!」
なんと! 何もかもお見通し!
「うっそー! 中村くんってどんだけハイスペなのー!」
「アソコすら高嶺の花!」
アソコすら高嶺の花!?
盛り上がるトイレ内で、一人ガタガタ震え出す私。
「だからこそさ、私の“名器”の出番ってわけよ」
杉崎先輩は妖艶に目を細めた。
どこからどう見ても最強の女性だ。
……名器。
そんな女性に迫られたら、中村くんはイチコロじゃないの?
勝ち目なんてない!
『初めてってさ、やっぱ面倒くさいわ』
そんなふうに悪態をつく中村くんを妄想して、小さくため息をついた。
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