不眠症と両片想い

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不眠症と両片想い

 距離感が、近いとは思ってる。   色々あって、少し不眠症みたいなもんを抱えてる俺は、よく膝枕をしてもらっている。  誰と構わずにしてもらっている訳じゃない。  同室の同級生にだけだ。  兎に角。眠りの浅い俺にとって眠る行為は、波乱だ。  自分の事や他人の事…  勿論。将来の事…  散々、悩みまくって寝れなくなる。部屋の時計の秒針や同室特有の人の気配なんかで、なかなか眠くならない。  『提案なんだけど、眠れない時は、オレが、膝枕か添い寝してあげるから。心配しないで』    最初は、俺を安心させるために言った冗談かと思っていたのに…  冗談では、なかった。  寝心地が…いい。  ナゼか、安心する。  あたたかい。  毎回、そんな事を考えていると、僅かな時間で寝付けるようになり。  高確率で、朝まで眠ることが出来るようになったのは、驚いた。    ただ。昨日は俺の方が先に、二段ベッドの上段に寝そべり布団に入ってゴロゴロしていた。  動画を見ていたら同室の古閑が、動画見せてとか、言いながら梯子を上ってきて…  いつの間にかって、前置きは言い訳になりそうだから。この際触れないが…  朝になり。  気が付いたら。  俺の腕枕で、熟睡中って…  しかも、ちゃっかり布団を被ってるし…  まぁ…膝枕 (?) で、爆睡している俺も、大概だけど…  目を閉じている分、より目立つ長いまつ毛とか、整った顔とか…  男なのに…  反則だろ?    …気持ち良さそうに寝息立てんなよなぁ…  俺の実家は、県外なために絶賛寮生活中真っ只中だ。  この状況が、単なる出来事で済ましていいものなのか?  俺は、昔から極端に眠りが浅いらしい。  三兄弟の真ん中が、俺のポジション。  マイペースで強気な長男と神経質気味で反抗期ど真ん中な三男に挟まってしまった。目立たずを通している次男で、神経質な弟と強気な兄貴の影響を感じ始めたのが、いつかは分からないが…  物心付く前から俺の不眠症が、始まっていたようだ。  その為に、少しでも寝付きを良くしようとカフェインを押さえたり。それを多く含む? コーヒーやお茶を避けつつ気を遣って生きてきた。  それが、8割がた仇となって返ってきた訳だが、それを見兼ねて手を差し伸べてくれた古閑の存在が、残りの2割に大きく食い込んできたのは明白だった。  俺が、よく眠れないと知ると古閑は、膝枕と添い寝を提案してくれた。  同室の男同士で、膝枕に添い寝と聞くと一瞬、おかしな想像をするかもしれないが、俺的には大真面目な話だ。  男の膝枕で? と当事者の俺でも思うが、古閑もまた膝枕に大真面目に付き合ってくれている。  まぁ…そんな感じに同室の古閑とは、馴れ合っている…  そんな古閑は、男女共に人気もあって存在は、大きい。  学校ではグループも違うし。  接点も薄そうに見えているのか、そもそも同室だとも思われてないのか寮での古閑を聞かれたこともない。  それは、それでいい。  問題は、俺が他のヤツらよりも、古閑から懐かれているらしいと言うことだ。  そう言うのを、目の当たりして妙な気持ちに戸惑う毎日だ。  俺…もしかして、懐かれてるよりも、古閑に好かれてる?  それこそ古閑に対して、微妙に惚れてる俺の自惚れかもだし…  俺自身。  ホントに古閑が、好きなのかも、まだ自信がもてない。  仲の良い友達にしては、スキンシップが、はたから見たらおかしいかもだし。  古閑もどちらかと言うと、同室だからって世話を妬いてるのかも知れない。  で、冒頭に話は戻る。  昨日は、俺の方が見たい番組があって、早々に課題やら大雑把な提出物を終わらせスマホで、ゲーム実況のライブ配信を二段ベッドの上段で見ていた。  そしたら。古閑が…  「あっ…それオレも見たい! 見せて!」  とか…言いながら。  2段ベッドの上に寝っ転がっていた俺の横に転がり込んだ。  その時点で、いつもの事かとは、思ったけど…  動画と配信者の話が、面白いのと俺らの笑いのツボと言うか、笑い出す感じが似てて…  その動画が、終わってから俺は何を思ったのか、似た様な番組を探してそのまま2人して見てて……  この有り様?  まぁ…今日から。冬休みだから…寝てても、寮長にどやされる心配は、ないだろうけど、だ。  「古閑…」  「………」  「おぉ~い。古・閑 !!」  古閑の頭が、肘よりも向こうだったから起き上がるには、差し支えなく肘をつくようにして身を起こすと、ニャム、ニャム。と、何か言い掛けながら、寝ている古閑を起こそうと古閑の耳元近くで、再度起きろと、声を掛けた。  本来の古閑は、頭が良くて、爽やかで、小柄だけどキレイな顔立ちをしているせいか、非常に女子に人気がある。  スポーツも、マラソンやら球技大会なんかの行事を見る限りでは…  得意に入ると、思われる。  オマケに頭も、そこそこ良いから。クラス委員とかもしてて…  (少し遊んでそうとか、見られてるヤツ) 俺にも、優しい。  話を合わせてくれる辺り。  色々な事にも、詳しいって有名だ。  で、性格も、良いときたら。  申し分ないだろうなぁ…  普通に女子からもモテてるし。  話のノリやら。勉強でも、何に対しても、アレコレと知っているはずなのに、知識をひけらかす事もなく。  ただ。教えて欲しい事だけを、的確に言ってくれるから。  そう言う所でも人格があるって言うか…  多々、思うことはあるものの。  俺は古閑を、普通に起こした。  いつもみたいに、ニマァ~ッて笑いながら。気持ち良さげに目を覚ましたりして…   「あっ…おはようぉ~…」  とか、言うの反則じゃねぇ?  古閑こと同室の古閑 響とは、この部屋で初めて出会った。  入寮したのは、古閑の方が少し早いくらいで、先客って出会いだった。  元々、この寮は旧校舎を個室に改築した造りで外観からして木造風だけれど、寮内は至って普通。  個室は、2人部屋で風呂は別だが、十分な広さの洗面所とトイレは付いていると案内されながら聞いた。  「ここが、キミの部屋になります」  部屋の前の名札には、古閑 響と俺の名の笹井 透の名が掛けられていた。  一呼吸置き。  ノックしたのに数秒経っても、何も返事がなくて、一応…  「失礼しまぁーーーす…」  って、言いながら初めて、この部屋に足を踏み入れた。  部屋の窓は開いていて、そこから斜め前の校庭脇に咲いていた満開寄り近い桜の木が、見えてて…  いかにも春って風が、その窓から入ってきていた。  風に揺れたカーテンに目を向け。流れる動きに視線を合わせて行着いた先。  壁にもたれる様に名前だけ認識した同室の古閑 響が、寝入っていた。  その気持ち良さげな寝顔に羨ましい気持ちが、込み上げる。  昼寝にしては、遅すぎで…  夕方って、時間でもなくて…    この景色が、憂鬱なのにキラキラって光るみたく。眩しいくらい曖昧な時間に見えた。  まぁ…その後直ぐに古閑は、目を覚まして、今したみたいにニマァ~ッて、悪気なく笑ったけど…  少しムカついていたのも、事実だったから。特にその時は、気にも留めなかった。  ここまで?  って言うか、仲…良く?  なるとも、思ってなかった。  同室だからって、必要に仲良くする事もない。  何って言うか、距離感が近い分。  俺自身も、踏み込まれたくない。  俺は、3人兄弟の真ん中で…  しっかりもので、マイペースな長男と神経質でイライラしがちの末っ子に挟まれて生きてきた次男だ。  今更、ヤロー同士の同室とか気にはならないし。似た広さに3人じゃないだけマシだとも思い。  余裕だった。  「えっと。寮長さん達からは、聞いてるよ。笹井 透くんだよね? 同じ1年で古閑 響って言います。ヨロシクね」  「あぁ…よろしく…」  今年の1年生は、普通科に文系にスポーツ科の3学科3クラスから4クラスになるとか…  同室の古閑が、何科は知らないが、それはどうだっていいことだ。  と、思っていたのに結局は、同じ学科の同じクラスで、出席番号も似たり寄ったり…  「ねぇ…笹井くん?」  と、古閑が、俺を呼ぶ。  「なに?」  「お正月は、帰るの?」  マイペースな兄貴が、大学受験で直ぐ下の神経質のイライラ末っ子が、高校受験だから…  「帰るにかえれねぇ……か」  お盆は、帰ってくんの? と、1ヶ月前から返事の催促が、来たけど…  今回は、連絡すら無いところを見ると…  「皆。それどころじゃないらしいっぽいね…」  「そう言うお前は?」  う~~んと、頭を悩ませながら首を俺の方に頭を傾けると、古閑のフワッとした髪が、顔に掛かってくる。  コイツ。  ワザトか?  「飛行機とフェリー使わないと、帰られないから…」  「へぇ~~実家ドコ?」  「言ってなかったけ?」  聞いた記憶はない。  最初の印象が、さっき説明した通りだから。  ロクに口も、きかなくて最低限の…おはようみたいな事しか、言わなかったからか、古閑も物静かなヤツみたいに、俺に接してた。  そな俺と古閑が、今みたいって訳じゃないけど、距離が近くなった切っ掛けは、あれも寝不足の居眠りみたいなもんか?  その日の夜に限って、普段飲まないようにしているコーヒーしかも、ブラックを口にしてしまい。  全く寝付けなくてしまった。  しかも、このブラックを飲む羽目になった理由も…ボーッとしてて買う段のボタンを押し間違えたと言う。  うっかりだし。  でも、買ったからには、飲まないと勿体無いし。  譲れる友人も、特に居ないし。  まだ、新入生で、食堂特有の空気に馴れてなくて…  振り返って、同級生や先輩達に…  コーヒー要りませんか?  俺…間違えたみたいでぇ…  とか、今なら言えるのに入学したてとか、何か言えなくて…  渋々飲んだら。  このザマよ…  午前中の授業は、何とかなったものの…  眠気のピークは、昼過ぎにやって来て限界って言葉が、ピッタリで…  4時限目の体育での疲れと、昼飯食った満腹感から睡魔が、襲ってきやがった。  辛うじて意識を保った学食からの帰り道に古閑が、声を掛けてきた。  同室で、同じクラスってだけで、気が向いた時にだけ声を掛ける相手で、もうその頃は、古閑はクラスの委員長だったし。  その際立った容姿からも目立つヤツだった。  「笹井くん。大丈夫?」  「あぁ?」   振り返った俺の顔は、凄い事になっていたんだろうな…  「えっと……」と、言ったままオレの方が、黙り込んだ。  同室の笹井くん。  呼びは、笹井くんだけど…  下の名前で呼んでみたいなぁ…  笹井 透ってカッコ良くない?  普通に顔も、大人びてカッコ良いし!  身長も、スラッとして高くて。  同じクラス委員の仲間が、聞いてくる程なんだよね。    “ どう言う人? ”  こっちが、聞きたいよ。  “ 同室なんでしょ? ナニか話したりする? ”  まだ。ちゃんと話した事が、ないんだけど…  と、まぁ…こんな具合いに聞かれることが、多いんだ。  率直な感想。  イケメンとは、また違って…  身長も、高いから大人びている分目立つ。  そんなの十分、知ってるオレとしては、追い討ちされてるみたいで、いい気がしない。  オレの方が、近くに居るけど…  透の事は、誰にも教えるつもりはない。  おそらく。敵意とか嫉妬みたいな気持ちなんだと思う。  オレ好きなんだよなぁ…  透が…  うん。多分。  この好きは、友達とか同室だからの仲間意識じゃない。  ここ最近。かなり考え出した答えなんだ。  迷ったよ。  それなりに、だって…  透は男だし。  オレも、男だし。  今まで恋愛対象は、女の子だったんだよ。  小さくて可愛らしくて、髪も長い。  こんなゴツイ男じゃない。  それなのにナゼか、どうしようもなく。気になって仕方がない。  こんな気持ちを、透にぶつけたりしたら。引かれないかぁ…  確実に引くよね…  迷惑になるよね。  でも、普通に話せる様にはなりたい。  そんな風に考え事をしながら2段ベッドの下で、オレが寝返りを打った時。  上の段で寝ているはずの透が、何度も、寝返りを打っていることに気が付いた。  考えてみれば、透はよく寝返りをうっている。  気配も、寝ている感じがしないし。呼吸音も寝入っているのは、不自然だ。  透は、寝付きがよくないのかなぁ…  で、今日は特に寝付きがよくないらしい。  そんな程度に考えていたけど、一度でも気になり出すと、オレの方も気になって寝付けなくてなった。  ただオレの場合は、明け方前には寝付いたらしく朝になってスマホのアラームで、普段通りに起こされた。  同時に2段ベッドの上も、ビクッと動いた様に思えたから少しは、眠れたと思う。  でも、実際、起きてきた透の顔を見たら不快指数が高過ぎて…  「…おはよう…」と、声を掛けるだけで、精一杯だった。  「おぉ…」  顔色も、そうだけど機嫌も悪そうな声で、オレの心配は確信になった。    “ これは、一睡も出来なかったパターンかな? ”    返事をかえしてくれたのは、嬉しいけど…  大丈夫じゃないでしょ? が、オレの気持ちの大半を占めてた。  「あの…笹井くん?」  「なに?…」  「あっ…えっと、何でもないです…」  「あっそ…」  あまりにも素っ気なさすぎて、「急に声掛けて、ごめん」とか、矛盾したように答えてながら。身支度しながら1人学食に向かう透を見送った。  それが、あっての昼休み。  立ち往生気味の透に話し掛けたんだ。  「昨日…寝れてないんじゃない?」  バツが、悪そうな顔して…  話し掛けんなよ。  みたいな視線を、返された。  「何で?」  何で? そりゃ…  「下で寝てるし。雰囲気? で分かるよ…」  フラつく透の腕を、思わず掴む。  あからさまにイヤそうな表情。  「倒れられたくないからね。そうだ。ここから少し歩くけど…静かで誰も来なさそうな所に案内してあげるよ…」  「…………」  俺よりも、チビなクセに…  周りが、変に思わないように俺の気分が悪いみたいだから。とか、説明しながら付き添って歩いてくれるとか…    「で? 何で、寝不足なのさ?」  「…………」  「何か、興奮しちゃうような動画見たとか?」  「…………」  「よく動画見てるじゃん?」  何か一々、気に触るヤツだなぁ…  「ほら。着いたよ」  古閑 響に案内されたのは…  「委員会室?」  その時だけ眠気が、後退した。  「そう。鍵は、顧問の先生とオレしか持ってないから」  そこを、私用で使うのか?  「取り敢えず。ここは、職員室のある2階の端だし。用途柄…滅多に誰も来ないから」  「じゃなくて…何で持っての?」  「鍵閉めは、1年の後輩がする決まりなんだけど…委員会がある週は、帰りが遅い時もあるからさぁ…寮住まいのオレが、持ってるってだけだよ」  「へぇ~~じゃねぇーよ。バレたらどうすんだよ」  ドギマギしている透の顔が、少し面白くて笑ってしまった。    “ 何で、古閑のヤツ笑うんだよ? ”    そんな感じで、ブスくれた顔もなんか可愛いとか思えて、許せてしまうのだから不思議だった。  委員会室の見た目は、一般的な教室を2回り小さくしたような部屋で、折り畳み式の長テーブルにパイプ椅子が、並べられていて… ホワイトボードと、書類作成に使う資料やその他の書類が、ファイルされた本棚や棚があるくらい。  それ以外は、何もない本当に限られた人しか寄り付かないし。近くに職員室があるから。騒ぎを起こすヤツも居なくて、いつもだい静かな場所なんだ。  だから休むには、調度いいと思い付いただけ…  「椅子に座ると廊下側から丸見えだから。床に座ろう。それに机に突っ伏して寝ると、首が痛くなるよ」  「確かに…じゃ…取り敢えず予鈴鳴ったら。起こせよ」  そう透は、言い床に腰を下ろして壁に寄り掛かり眠ってしまった。  「えっ、もう? 早っ…」  寝付きが、よろしくない透が、秒で寝るとか。  よっぽど、眠かったんだね。  休み時間は、後…20分程あるから。少し寝かせて上げようと、スマホで時間を見ながら俺も、隣に座った。  でも、隣の透は寝た姿勢が悪かったのか、凄い勢いで眠ったかで、首が前に倒れて突っ伏して、前に倒れそうになる度に身体を起こそうと堪えている状態だ。  逆に勢い余って、壁に頭をぶつけないかと、こっちは気が気じゃなくてオレは、透の何気に肩を持った。    どうせなら?  寄り掛からせるか?    でも、前のめりの反動からか透は、そのままオレの膝へ…  それでも、起きなさそうな透。  最早これは、アンラッキー?  普通にラッキーで、良くない…  気になる子が、自分の膝で寝てくれるとか、  無防備って言うか…    嬉しいに決まってる。  だって…  オレは、透に友達以上の想いって言うか、それだけじゃない気持ちって言うのか…  透への気持ちを隠してる。  胸が、押し潰されるくらいに辛い時もある。  それでも、近くに居たいから。  この気持ちは、決して言わない。    そっと、透の髪を撫でた。    オレと違って、その硬い髪質は少し短く切り揃えられた所が、チクッとした鈍い痛みを、手の平に残す。  聞こえてきたチャイムの音に、慌てて透の耳を覆った。  起こすのが、可哀想。  それもあったけれど、もう少しこのままで居たいが、本音。  少しでも、こんな無防備な透を独占したくて…  透と居ると、独占欲と我が儘な自分になるのが、情けなくなる。    俺が、強烈な眠気を感じたのは、昼食後直ぐのはずだ。  ちゃんと目が覚めてない目で、制服の上着に入れてあるスマホを取り出して見てみるも…  「5時限目の途中?」  あれ? 起こすって…  「あっ、起きれた?」  どこまでも、爽やかな声が耳に届く。  いや…  部屋に響き渡ったの言い間違いだ。  慌てる様に振り向くと、とんでもなく近い距離に古閑の顔があって、驚いたけど…  それ以上に驚いたのは、膝…  「膝枕の事?」  仰向けになった直後に古閑は、俺の胸辺りに自分のスマホ持ったまま手を置いた。  「最初は、壁に寄り掛かって、寝て居たんだけどさぁ…前のめりのになりそうになったから肩を掴んだら。オレの膝に倒れて…そのままにしてた」  「いや。いや…起こせよ」  俺は、何に焦ってんだ?  同室の古閑に変な醜態を晒したからか?  それとも、胸ん所にスマホごと手を置かれて、動けないからか?  って、動く気になれば動けるから。力は入ってない。  どこまでも、穏やかに微笑む古閑の口元が、少しニヤリと歪む。  妙にその表情が、リアルに色っぽくて…  キャー。キャー。女子が騒ぐ理由が、知れた気がした。  その前に男に対して、色っぽいってなんだよ ?!  「気分は、どう?」  「どうって…」  見下ろされると、顔面偏差値の圧が、迫ってくるようで…  「起こせって、言ったろ?」  と、半ば強引に古閑の手を払う様に身体を起こした。  「これ下手したら。サボりになるだろ? 担任にバレたらヤバいだろ !!」  と、変な気持ちを抱えたまま俺は、古閑に対して悪態を付いた。  古閑は、少しも悪くない。  俺が、悪いだけだ。  なのにだ。  古閑は…  怒りもせず。  笑った。  何か、1人で焦ってる俺、カッコ悪…  「ねぇ。聞いていい?」  「何を?」  「寝不足の理由。さっきは、聞きそびれたし」  悪気は、ないんだろう。  聞きたがりな顔して、俺の顔を下から覗き込んでくる。  「…コ…」  「こ?」  観念しろとでも、言いたげだけど、その優しい顔に一瞬、たじろいだ。  「コーヒー…飲んだら。眠れなくなった…」  その言葉に古閑は、目を大きく見開きパチクリさせている。  「ダサくて悪かったな…俺…コーヒーとか飲めないんだよ。なのに昨日…間違えて寮の食堂にある自販機で…段を押した違えて…」  「それでか…」  「俺、お茶もダメで…」  アホらしい本当の事を俺は、ブスくれて答えた。  なのに古閑は…  「そっか…じゃ…これから。もし間違えて買ったりしたら。オレに頂戴。ブラックでも微糖でも、カフェオレでも、代わりに飲むよ」  そんな反応を、見せた。  分かってるよ。みたいな顔して…  それには、悪意もなければ…  茶化すような反応でもない。  真っ直ぐに俺を、見上げてきた。  「あっ…ねぇ…」  声を潜ませる古閑が、俺を屈ませる。  「ここ…職員室近いから。声は小声ね。5時限終わったら。こっそり出よう。まぁ…バレたらバレたで…」  とか、不意に耳元で囁き出す。  さすがに、それにはドキッとした。  古閑のそう言う所だよ。  普段でも、急に声を掛けてくるし。  部屋でも、急に話を振ろうとしてくるし。  いつ声を掛けてくるか、予想がつかない事が、未だに慣れない。  膝枕だって…  起こせば、よかったろ?  けど、本の1時間くらいの時間なのに…  スッキリと目が覚めた。  カフェインで、直ぐに眠れなくなるのは勿論。何かが気になると途端に俺の眠りは、浅くなる。  年中寝不足だからと言って、こんな他人に寄り掛かるような寝方をしてしまったの初めてだ。  「あの今更…その…迷惑掛けて、ごめんな」  それなのに古閑は、例のふざけたみたいな…  気の抜けたような顔して、ニマァ~って笑った。  「笹井くんって…もしかして…繊細な方?」  何を唐突に?  続けて古閑は、「たまに眠れないのかなぁ~って、思う時があるからさぁ…」  その問に俺は、戸惑うよりも先に、よく俺を見てるなぁ…と他人事のように思えてならなかった。  俺の実家は、普通のベッドと2段ベッドが、子供部屋に並べられていて2段ベッドの方に俺と下の弟が、寝ている。  当然と言うか…  小6になった弟に上の段を、乗っ取られ。  渋々下の段を使う羽目になった時、上の段にいる弟の物音と言うか気配と言うか、そんな事が気になったのを、改めて思い出した。  「悪い…うるさかったな…」  兄弟が多いと、こんなのは日常茶飯事だから俺からすれば、どうってことないが、古閑にしてみれば…  「そんなことないよ。オレは、一人っ子だから。兄弟が居るってこんな事かなぁ…って、擬似体験的な?」  「そんな良いもんじゃ…ねぇよ」  物も、おやつも皆、早い者勝ちで、取った取らないは当たり前。  兄貴は、普段は物静かなのにキレて怒るととんでもなく…コエーし。  弟は、神経質ってか…なんか気難しい感じで、終始イライラしてる。  俺と兄貴が、のほほんとしている分のシワ寄せか…  俺もそれなりに気には、していた。  多分だけど…  だから。普段から気を遣うように振る舞うクセが、付いてんだろうな…  「そうなんだ…じゃ…たまに聞く取っ組み合いのケンカとか?」  「それは、ないなぁ…さっきも言ったけど…弟は神経質でイライラしがちのだから関わっても、こねぇ~し。兄貴と俺だと、マイペースな兄と戦意喪失系の俺だから軽い口喧嘩はあっても、ドラマやマンガで見るようなケンカは、なかったよ」  「へぇ~~っ…」  「でもまぁ…食った食わない。ゲームやらマンガ本は、どこやった?…のケンカは、未だにしてる」  「…一人っ子には、分かんない世界だなぁ…」って、言いながら古閑は笑った。  でも、羨ましいって感じにも見えない。どっか冷めてるような静かに解釈してるみたな。  古閑は、当たり障りなく。普通と言えば、普通に周りと関わっているようだけど、何となく他人行儀で、ここから自分の方へは、入ってくるなとばかりに自分からは何も言ってこないように思えた。おそらく周りもそれに連れて、踏み込まないんだろう。  少し面倒なヤツだな。  「なに?」  「別に…」  俺も、それに習って何も言わないでおこう。  「ねぇ…」  「ん?」  「そう言うのは、分かったけどさぁ…たまに出る睡眠不足は、解決しなくない?」  あの古閑が、人の話を蒸し返した?  「いや…別に…眠いかなぁ~ってだけだし。困るのは、自分だけだろ?」  ふ~~んっと、古閑は納得した風に立ち上がる。  「じゃさぁ…添い寝してあげようか?」  「ん?」  あんまりにも堂々と、あっさりと言うものだから。聞き流しかけた。  「えっ…添い寝?」  「反応するの遅くない?」  そう言う問題じゃない!  「ほら。人の体温って、ほっとするって言うでしょ?」  聞くけど…  「人に触れたりするのも、身体には良いんだよ!」  力説されても…  男子寮の同室のヤロー同士で?  「…何? 新手の勧誘?」  「何でそうなるの?」  気持ち悪いだろ?  「個室だから。誰も見てないよ!」  随分と、食い気味にくるなぁ…  ずかずかって、されるものするのも、しない主義じゃなかった?  何なんだ?  高圧的ってわけじゃないけど…  偉そうな態度で、迫ってくるとか…  逃げ場を探すように俺は、壁際に追い込まれる。  コイツは、何がしたいんだ?  「じゃ…添い寝が、ダメなら。今みたいな膝枕とか…どう?」  どうと言われても、男が男の膝枕で喜べるかよ。  何なんだ? コイツ。  俺で、何がしたいんだよ。  美形って言っても、男に迫られてもなぁ…………  変な緊張感に、喉が渇き唾を飲み込もとするも、口の中がカラカラに渇いて何も飲み込めない。  面白がってる?  からかわれてる?  「どう? 添い寝か、膝枕か選んでよ」  何だよ。その選択肢。  本当になに考えてやがる?  「せ…迫ってくんな! 落ち着けって !!」  俺も、何を言ってんだ?  そう叫んだら。古閑は、これ以上近付くのを止めたが…  好奇心を隠せない視線で見上げてくるのは、確かっだった。  何って答える?  そう古閑に向き直すと、授業の終わるチャイムが鳴った。  急にざわつき出す校舎に妙な焦りを感じ始める俺は、思わず……  「…ひ……膝枕で…」  「うん。分かった!」  おい。そんなあっさり?  「早く教室に戻ろう。で、言い訳をどうするか…だね」  興味の対象が、サボりの理由に変わっていく。  廊下に出て職員室に差し掛かるとオレ達は、早々に担任に見付かった。  担任が、急ぎ足で近付いてくる。  オレ達は、小声で囁き合う。  「適当に受け流しちゃおうか?」  「それは、まずいだろ?」  「おい。2人とも、ドコに行ってたんだ?」   「えっ~~と、ですね…その…」 と続けて、口を開こうとするオレの前に透が、立ち塞がり担任に頭を下げた。  「あの。すみませんでした。急に気分が悪くなって付き添ってもらってました…古閑は、悪くありません !!」  ウソでは、ないけど…  担任は、ボサボサな髪をした透を見ながらオレに向き直し納得したように教室に戻れと言い。  透には、具合が悪いような早退するかと様子を伺ってきた。  まぁ…少し寝れたとしても体調は、あまり良さそうでもないらしいし。早退が妥当だよね。  「あの…笹井くんは、このまま寮に戻って休んだら? 荷物ならオレが、持って戻るから」  同室ってことで、融通が効いたのか…  担任は、寮の方まで透を送ってくると連れていった。  サボりは、バレてないらしいけど、オレが透を送って行きたいのになぁ…って、思う度にイライラした。  担任に嫉妬でもしてるのかって、内心笑った。  透の席は、オレの直ぐ後ろ。  何となく後ろを振り返ると、いつもは、透の姿を見ることが出来るのに早退したから。  教室では、見れない。  早く寮に戻りたい。  ウズウズするような。  心苦しいような気持ちが入り交じる。    古閑の思い付き。  担任に付き添われ寮の部屋に戻った俺は、疲れたのかラグの上に崩れるようにうずくまった。  古閑の態度と発言に妙な動悸が、止まらない。  アイツは、俺をからかってるだけだよな?  俺に気とかねぇーよなぁ?  添い寝に膝枕…  冷静になれ俺 !!  確か古賀は、何日か前の昼休みに最近のドマラに出てた綺麗な顔の女性俳優さんと、何とかって言うキラキラした女性グループの現センターの女の子が可愛い。好みだとかって、友達と話してなかったっけ?  そうだよな。  こんな身長が、でかくて…  ゴツイやつ…  寧ろ古閑よりも、可愛くねぇーヤローを……そんな風に思うわけねぇーよ。  考えすぎだ。  考えすぎ…  俺は、床に引かれたラグの上に転がった。  寝不足気味の頭で何を考えても、結果的には同じなんだ。  このままボッーとしながら眠ってしまえばと、浅はかに考えていたけど…  寝れないのである。  体勢を変えても、うつ伏せになっても…  仰向け横向きに変えても…  寝れない。  頭を掻きむしりながら勢いよ起き上がり。窓ガラスに映った自分の姿を見てみると、自分が思っているよりも、頭がボサボサで、寝転んでいたせいか、制服を着崩したようにダサダサになっていた。  シワになると後が、面倒と思い。  私服に着替えた。  だからと言って、寝れる訳じゃない。  コーヒーも、お茶も飲んでない。   何で、寝れねぇーの?    そう言えば、ガキの頃。  真夜中に目が覚めて、寝れなくなって…  泣きそうになった時が、あったけど…  あの時は、どうやって眠ったんだっけ?  いや…あの時は結局、朝まで寝れなくて、親に起こされた時に俺の顔色が青白くてクマ作ってて、それを見た親がヤバいって判断してくれて、学校を1日休んだんだ。  それ以降は、自分なりの対象のしかたとか? 考えて…   眠れない時は、何をしても寝れないからと、コーヒーやお茶を、苦手として避けるようになったのも、その頃だ。  それにしても動悸が、おさまらない。  苦しい。  「切ない?」  独り言を呟いた口に手を当てる。  触れた顔が、熱い事もその時に知った。  俺…どうした?  動悸とか苦しいとか…  顔が熱いとか…    まさか…俺………  ガチャッ…  静かに開けたつもりだったけど。  人影が、酷く慌てたように動いてオレに振り返る。  てっきり寝ているのかと思っていた相手は、オドオドして顔を真っ赤にしていた。  そんな顔さえも可愛いと思えるオレは、かなり重症かもしれないなぁ…  「寝てなかったの?」  「いや…その…眠れなくて…」  そんな気は、若干してた。  下向いて暑くもないのに汗かいた風に汗を拭って、耳まで真っ赤にしてオレを見ないようにするとか……  ひょっとして、オレの事。好きだったりするのか?  じ~~っと見詰めたまま近付くと透は、咳払いをする。  「な…何でもないし。気分も悪くない」  「へぇ~~っ…そう」  オレは、透の声を聴きながら私服に着替えてスマホ片手に自分のベッドにゴロンと横になり動画を見始めた。  別にからかってやろうとか、そんなガキみたいなことは、好きな子にするつもりはないけど…  これ以上煽っても、嫌われるだけだしね。  動画を見る振りして横目で、チラッと透を見てみると、未だにオドオドしてた。  なんかその姿が、可愛くてさぁ…  ドッキッて言う感情の中にキュッと切なくなる気持ち沸き起こってきた。  あぁ…オレは、やっぱり透が好きなのかも。  透自身の気持ちは、微妙だけど、この感情が好き以外で説明しろとか正直に言って無理だ。    大きく息を吐き出した古閑は、ベッド上に起き上がると、俺を手招いた。  「なんか…面白い動画でもあった?」  「違うよ」  四つん這いに屈んだ瞬間、古閑は俺の腕を引っ張り上げる。  その拍子にバランスを崩した俺は、古閑の膝に倒れ込んだ。  起き上がろとすると肩を掴まれ静止された。  「古閑 ?!」  「夕飯まで、まだ時間あるし寝てたら? 笹井くんが寝てる間、オレは動画でも、見てるしさぁ…」  そう言って古閑は、動画を見始めワイヤレスイヤホンを耳にはめた。  気を遣ってくれているのか、それとも…どうとも思ってないのか…  モヤモヤした気持ちは相変わらずだけど、ドキドキする動悸が、鼓動に変わっていくのを、不思議に感じながら。安心した風に目を閉じてしまった。  人って、本当に体温だけでも安心するもんなんだなぁ…  触れてるだけで、落ち着く。  って、俺らの関係ってなんだ?  他の同室のヤツらって、こんなことする?  わけないか…  なら俺と古閑の関係ってなんだ?  友達? ろくに口もきいてこなかったのに?  でも、古閑って誰にでも優しいイメージだし。  優しいだけで、ここまでするか?  いや。俺ならしない。  兄弟って枠でも面倒くさいのに他人の存在とか、ウザいだけだろお互いに…    と透は、数秒も掛からないで寝ちゃった。  緊張感、無さすぎ…  逆に心配になるけど、透ってあんまり人に対して頼ったりしないらしいから。こんな風に頼られてるとか少し嬉しい。  「…他の人には、こう言うの…しないで欲しいな…」  と、軽く鼻を摘まむと仰向けだったのが、背中を丸めた横向きの姿勢に変わった。  寝顔が、見たいけど…向こうをむいてるから。  「…こっちむけって…」  背中を指で小突いても、深そうな眠りの真っ只中の透には、効果がない。  でも、他ではしなさそうな無防備な姿を見られる特権は、誰にも譲りたくないなぁ…  ってぐらいオレの中で透は、もう同室の同級生って枠じゃないし。同じクラスの友達でもない。  それよりも、ずっと大きな存在として、ここに居る。  ずっと、居座ってて欲しと願っている。    久々に良く寝た感が、あって…  薄暗い部屋の中で目を覚ました。  今、何時だ?  キョロキョロするも見えないぐらいに、部屋の中が暗い。  なんか…寝過ごした感が、あるのは気のせいじゃなくて…  慌てて起きようとすると、俺の後ろでは壁にもたれるように古閑が、眠ってた。  もしかして、あれからずっと寝かせてくれてたのか?  また鼓動が、早くなる。  取り敢えず起こさないと…  揺り起こすと、ハッとしたように目を覚ます。  「あれ…真っ暗だね…」  スマホで、時間を確認すると。  「9時前…って、点呼始まるじゃん! ヤバい! 部屋の外に出ないとぉ~っ…」  古閑は、勢いよくベッドから飛び出していくついでに部屋の電気を点けた。  眩しい光に一瞬。目が眩む。  「笹井くんは、ここに居なよ。寮の人達には、まだ具合が悪そうって言っとくから」  「あっ…あぁ…頼む…」  寝不足って、具合が悪いには入るのか?  微妙だな…  しばらくして古閑は、戻ってきた。  「ねぇ…どうしよう。夕飯! もう少し早く起きたら。塀を乗り越えて隣のコンビニ行けたのに…」  えっ…  真面目そうな古閑から。塀を乗り越えてコンビニに行くって言葉聞くとは思ってなかった。  「ちょっと、何その不振な目」  「別に古閑でも、そう言うこと言うんだなぁ~って」  「そりゃ…オレだってコンビニぐらいは行くよ。ここって、8時半には門が閉まるしさぁ…コンビニでしか売ってないモノ食べたくなったら。行くしかないし。笹井くんだって行ってるでしょ? 大きなコンビニの袋下げて戻ってくるじゃん! あれ…何買ってきてんの?」  よく見てるなぁ…  渋々って訳じゃないけど、俺は自分のクローゼットの中を開けて見せた。  「カップ麺?」  「ケトルもあるぞ…」  俺は、段ボールから白いケトルを取り出した。  「あるぞじゃなくて…」  「夜食的な?」  「まさか…オレが、寝た後で…」  「たまにな…」  「ヒド…ズルイ」  めちゃくちゃ落ち込んでねぇ?  ジメジメすんなよ…  「今日は、色々と迷惑かけたから。袋の中の好きなの選んで食っていいよ」  ニマァ~って笑って、しばらく袋の中身を取り出したり色々と考えてから。豚骨ラーメンを取り出した。  丁度、ケトルのお湯が、沸い所だったから。最初に古閑のカップ麺にお湯を注いだ。  「夕飯食べ損ねたけど…カップ麺食べれて良かったよ」とか、感想なのか礼なのか、よく分からない言葉を口にしたけど、旨そうに食う姿には、初めて見る愛嬌みたいな感覚があって…  俺の中から真面目な委員長ってイメージは、かなり薄まった。  「美味しいね」  見掛けで言えば、あっさりとした塩味でも、食べてそうな感じだけど…  こってり濃厚豚骨味だもんな。  ギャップが…  「…何で、笑うの?」  「別に…旨そうに食うなぁ~って」  最後の方の麺を、ちゅるんとすすり。スープをも飲み干し一息付くと古閑は、満足そうにその場に転がろうとした。  「眠いのか?」  「まさか、起きたばっかりだし。でも、お腹いっぱいだから眠くなるかも?」  何ってことを、フワッと笑いながら答える古閑の姿にドキッとしてしまうのは、もう気のせいじゃないことぐらいに、分かってた。  「ねぇ~っ、笹井くん」  「ん?」  俺は、スープに口を付ける。  「ねぇ…提案なんだけど、眠れない時は、オレが膝枕か添い寝してあげるから。心配しないでね」  スープを、吹き出しかけた。  「…………」  「寝れないのは、辛いじゃん! だから。ねぇ!」    まぁ…それから色々あっての…  添い寝と膝枕だ。  古閑だって、ふざけて言ってる風でもない。  真面目に言ってた。    で、俺が出した答えは…    「その時は…お願いします」  だった。    好きと言えば、好きなんど思うけど…    相手も、同じ気持ちの好きかと言えば、どうかは分からないから。     俺 (達) は、この友情か恋かの間を今も尚、迷走し続けている。            終わり。          
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