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古屋敷
「へぇ…。…ねえ、お父さん」
「何だ?」
「そのお屋敷に真琴と遊びに行っても良い?」
最初は単なる好奇心だった。
どんなお屋敷か見てみたいのと、真琴と一緒の時間を、学院とそれぞれの家以外でも作りたい。
この時は、そこに住むなんて事まで考えてもいなかった。
「それは構わんが、中には鍵がないと入れないし庭に井戸がある位で特にこれと言って面白いものは無いぞ?」
「それでも良いの。夏休み、課題が終わったら暇だもの」
「そうか…わかった。今、地図を描いてやるから少し待ってなさい」
お父さんは、そう言うと紙と筆記用具を持って来た。
そして、書斎のローテーブルの上に紙を広げて地図を描き始める。
私はその様子をどこか楽し気に眺めていた。
お父さんは、要領良く、そして解り易く地図を描いてくれた。
「目印はコンビニだけ?」
「もう少し足を延ばせば心誠(しんせい)学園という高校もあるがな。香澄には関係ないだろう」
確かに真琴と違う高校に転校するなんて考えられない。
その時の私は、そう思っていた。
そして、お父さんにお礼を言って、地図を受け取る。
夏休みは、もう直ぐそこまで迫っていた。
「あっつーい!ここで涼んでいかない?」
そして、あっと言う間に夏休みに入った。
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