古屋敷

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しばらく他愛のないお喋りをして、汗も引いてからコンビニを出る。 と、途端に再びムッとくる様な暑さが身体にまとわりついた。 「地図によると、ここの角を曲がって真っ直ぐ歩いて行けば、もうお屋敷に着くみたい」 私がお父さんから描いてもらった地図を見ながら「暑いー。暑いー」と愚痴っている真琴を励ますように案内する。 すると、5分くらい歩いたところで、広いけど古びたお屋敷が見えてきた。 本当に『古屋敷』という言葉がピッタリ当て嵌りそう。 「香澄。鍵、持っていないんでしょう?庭には何があるの?」 「古い井戸があるみたいよ…って、良かったー、結構、思ったより日陰が在るわね」 「これで日陰が無かったら、井戸に飛び込みたい気分よ」 道に面したところに古屋敷の広い庭が見えて、木が沢山生い茂り、日向の方が少ない位だった。 門まで辿り着くと、一応表札があって確かに『諸橋』と書かれている。 ここで間違いないみたい。 門、開いているかな…。 そう懸念したけど、それは私の杞憂で終わった。 どうして、売らずに持ち家のままにしているのか分からなかったけど、古いのを除けば広くて立派な佇まいだ。 2人で庭に足を進める。 雑草が生い茂る中に、大きな井戸がポツンとあった。
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