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「草が足に触れて痒いわね…。草むしりした方が良いのかしら…?」
「そんな事したら幾ら日陰でも熱中症になる広さじゃない。蚊も飛んでいるし、長居は無要よ。井戸水だけ飲んだら、そこの縁側で休んで帰りましょ」
「汲めるかしら…よいしょっと」
私が井戸の井戸屋形の滑車を回すと、釣瓶桶が上に上がってきて、透明な水が沢山入っているのが見えた。
「真琴、先に飲んで良いわよ」
「ありがと、頂きます」
真琴はどこか嬉しそうにそう言うと、両手で水を掬い、ふた口み口ゴクゴクと美味しそうに喉を鳴らして飲んだ。
体質的に井戸水が身体に合わない場合も有るけどこの暑さじゃあね…。
「冷たくて美味しい!それ、持っているから香澄も飲んでみなさいよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
私も真琴と同じ様にして井戸水を飲む。
確かに、水道のお水より遥かによく冷えた水が身体に沁み渡っていくみたい。
喉を鳴らして飲んじゃう気持ち、分かるな。
私達は水を飲み終えると、日陰の縁側に膝を抱えて座った。
「この辺、何も無いのねー」
「それが、お父さんの話によると、もう少し足を延ばせば心誠学園って高校があるみたいよ?」
「あー、私、知っているわ。男子校だけど、確か来年から共学になる筈よ。それもイケメンが多いみたいね。去年の文化祭に行った子が言っていたわ」
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