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そうだったのね…。
真琴は、私と違って彼氏がいた時期もあったからそういう情報には耳ざといみたい。
私は冗談めかして言った。
「もしかしたら帰り道ナンパされちゃったりしてね」
「もし本当にそうなったとしても香澄は着いて行かないでしょう?このカタブツ!」
真琴がそう言って軽く私の頭をこづこうとしたから、私は「やだあー!」と言って、真琴から視線ごと身体をよけた。
庭に面した道が目に入る。
そこを1人の男性…パッと見て私達と同じくらいの歳の人と目が合った。
顔が紅い男性は、私と目が合うと力無い声で言った。
「済みません…冷たい飲み物を下さいませんか?頭が痛くて…」
私は思わず真琴の顔を見た。
顔が紅くて頭痛がするって事は熱中症になりかけているのかもしれないけど、見知らぬ男性を敷地内に入れて大丈夫なのかしら…。
真琴は、私を安心させるように、背中を摩りながら男性に声を掛ける。
「井戸水なら在ります。そこの門から、コッチへ来て下さい」
男性が門に向かったところで真琴が小声で言う。
「香澄、大丈夫。襲ってきても、私が撃退しちゃる」
こんな時、1人じゃなくて良かったと思う。
真琴は学院では合気道部に入っているから、いざという時には頼りになる。
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