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「逃げたわね。駅員に突き出してやろうと思ったのに」
真琴は自分が被害に遭ったみたいに怒った声で言う。
「良いわよ。駅員さんに突き出したら遅刻しちゃうし。…助けてくれて、ありがとう。真琴」
「そう?又、被害に遭ったら直ぐに言って?今度は思い切りつねってやるわ!」
真琴はまだ憤慨していたけど、私は嬉しかった。
勿論、痴漢に遭ったことではなくて、真琴の強い優しさが。
それからは押し潰されそうにはなったけど、痴漢には遭う事は無くて東京駅に着いた。
さっき自宅の最寄り駅ホームで手を振り合った女子達と合流する。
「香澄、痴漢に遭ったんでしょ?大丈夫?」
「え、ええ。真琴が助けてくれたから」
「真琴の声、私達の所まで聞こえてきたわよ。あんな男は島流しにでも遭えば良いのにね!」
他の女子達も心配してくれたり、怒ったり。
だけど、見ると真琴には、さっきまでの覇気が無い。
どうしたのかしら?
真琴は不安そうな声で私達に言いながら歩く。
「この駅、広過ぎるわよ。皆で一緒に行った方が良いわ…」
真琴…まだ迷子になるか不安に思っていたのね。
「大丈夫。私が…私達がついているから」
私は真琴を安心させるように再び手を繋いだ。
この手が2度と離れなければ良いのに…と、心の中だけで思いながら。
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