修学旅行

6/10

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「逃げたわね。駅員に突き出してやろうと思ったのに」 真琴は自分が被害に遭ったみたいに怒った声で言う。 「良いわよ。駅員さんに突き出したら遅刻しちゃうし。…助けてくれて、ありがとう。真琴」 「そう?又、被害に遭ったら直ぐに言って?今度は思い切りつねってやるわ!」 真琴はまだ憤慨していたけど、私は嬉しかった。 勿論、痴漢に遭ったことではなくて、真琴の強い優しさが。 それからは押し潰されそうにはなったけど、痴漢には遭う事は無くて東京駅に着いた。 さっき自宅の最寄り駅ホームで手を振り合った女子達と合流する。 「香澄、痴漢に遭ったんでしょ?大丈夫?」 「え、ええ。真琴が助けてくれたから」 「真琴の声、私達の所まで聞こえてきたわよ。あんな男は島流しにでも遭えば良いのにね!」 他の女子達も心配してくれたり、怒ったり。 だけど、見ると真琴には、さっきまでの覇気が無い。 どうしたのかしら? 真琴は不安そうな声で私達に言いながら歩く。 「この駅、広過ぎるわよ。皆で一緒に行った方が良いわ…」 真琴…まだ迷子になるか不安に思っていたのね。 「大丈夫。私が…私達がついているから」 私は真琴を安心させるように再び手を繋いだ。 この手が2度と離れなければ良いのに…と、心の中だけで思いながら。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加