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*  スマホでSNSを見ると高校時代の友人たちの楽しそうな写真やストーリーが出てくる。美帆の周りは現役合格した者が多く、それぞれの日々を楽しんでいるようだった。  画面をスクロールしているとふと目に止まった名前があった。  それは高校の同級生である真山玲斗(まやまれいと)の名前だった。真山本人は写っておらず、どこかのキレイなカフェの写真があるだけだった。  卒業式のあとに真山から「ずっと好きだった」と伝えてもらったことを美帆は今でも脳内でくっきり再生できるほどに覚えている。高校二年で同じクラスになったときから美帆もまた真山に恋焦がれていた。  東京の国立大学に進んだ真山と、石川に残っている美帆ではつきあうことはできず、「来年、東京の大学に受かってみせる」と美帆は誓った。  四月こそ勉強に真剣に取り組んでいたが、五月にして早くも大きくペースダウンし、予備校での講義も半分眠ってしまっている状態だった。  この一ヶ月で美帆は今年受けた大学の問題をすべて解いた。散々な結果だった共通一次もすべて解きなおした。解き方が頭にすっかり入ってしまい、もう解きなおす意味もない。  過去を振り返るのは終わったので、あとは来年に備え、数学や英語を磨いていくべきなのだが、みんなの楽しそうなSNSを見るたびに心が折れていく。  あと何ヶ月、こんな日々が続くのだろう。  美帆は大きなため息をついた。  そのときだった。美帆は目の前のアスファルトに何かが落ちていることに気が付いた。  それは、黒いカードのようだった。
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