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 二月九日。  東京にあるA大学の受験日だった。  金沢市でも地方受験できるので東京まで行く必要はなく受験ができる。  試験会場に迷わず辿り着き、朧気な記憶ではあったが座った座席は既に一度座った席と同じであるような気がしていた。  問題用紙が配られてから美帆は胸の鼓動がどんどん速くなっていることがわかった。  もしかしたら、問題は違っていたりするんじゃないかと。過去には戻ったけれど、試験の問題まで同じとは限らない。そんなに神様は優しくないんじゃないかと。問題用紙を開いてみたら全然違う問題が出てくるのではないかと。  そしたら、また浪人だな、と美帆は自虐的に笑った。 「はじめてください」  試験官の声で美帆は問題用紙を開いた。数学の第一問め、その問題を見てから一つ頷く。目で残りの問題を追い、次のページをめくり、最後のページまでパラパラと開きながら目を通した。  もう一度、第一問めが書かれたページに戻り、美帆は声をあげて笑いそうになることを必死で堪えた。  ダメだ、ここで笑っちゃダメだ。退場させられてしまう。  美帆は自分に言い聞かせた。  書かれていた問題は、すべて美帆が何度も解き直した過去問と全く同じ問題だった。
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