恋人に浮気をされたので 相手諸共ボコボコにしようと思います

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 春は容姿は完璧で、幼い頃からチヤホヤされてきた割には付け上がることはなく、謙虚な方だと思う。  周りからの評判は良く、道徳心は備わっているとみんな口を揃えて言うし、モテるからといってホイホイ転がるような奴ではないのだ。  それにこいつは、ストレートに愛情表現をしてくる。大好きや愛してるだなんて毎日言われていたし、それは嘘では無い。いや、無かったと信じたい。だが浮気が発覚して、それらが全て幻だったのかと残念な気持ちになった。  隣に腰を下ろして、俺はポツリと呟いた。 「別れるか」  素早く顔を上げた春は、涙をいっぱいに溜めた目を見開いた。 「えっ? 嘘でしょ? わ、別れるってしーちゃん、本気で言ってんの?!」 「どの口が言ってんだよ。浮気されたんだから、そんなん普通に考えるだろ」 「ちょ、え? マジで意味わかんない。わ、別れる? ははっ、ちょ待って、うふふ、冗談きっつー」 「怖ぇな、笑うか絶望するかどっちかにしろよ」 「……やだよ! 俺、しーちゃんのことが大好きなのに!」 「だったらなんで浮気したんだよ! こっちが狼狽えるわ!」  急な別れ話に、春は激しく動揺している。  本当に不思議な話だ。  2人の関係が冷めきっていたのなら分かる。だがそうじゃない。それに春の場合、俺に気持ちが無くなった時点ではっきりと言うだろう。こそこそと浮気するようなタイプじゃない。 「なんで浮気したのかって? しーちゃん、よく聞いてね」 「なんだよ」 「俺、浮気はしてないよ!」  キリッ! じゃねぇし。  俺は春の襟首を掴んで、ぐいと顔を寄せた。 「あぁ? 他人のアレにチ○コ突っ込んだんじゃねぇの? それが浮気じゃなかったら何だっていうんだよ」 「や、やだ、しーちゃん卑猥……! よく考えてみてね。浮気ってどういう字書く?」 「浮気は浮気だろ。浮ついた気持ちと書いて」 「そうそう、浮ついた気持ち、だよね! 俺、全く浮ついてないよ。しーちゃんが一番。しーちゃんが大好き、本当に愛してるっ」  だから、キリッ! じゃないんだって。  呆れた俺は一度春に頭突きを入れた。  春は額を押さえながら悶絶している。 「お前、荷物全部まとめて出てけ。一週間くらいは猶予を与えるから」 「えっ……? マジで別れるつもりなの? しーちゃん、まともにご飯も炊けないのに? 洗濯機も回せないのに?」 「うっ」  そうだった。  言われた通り、俺は会社では働くけれど、家では何も出来ないクズ野郎だった。  料理や洗濯、掃除、全て春が受け持っている。  そしてここのアパートや保険、プロバイダの契約なんかも、手続きは全て春に任せた。もしこの家から春がいなくなるとしたらきっと面倒なことになる。  いや、そんな手続きうんぬんの前に、正直別れたくない。  俺だって、春が大好きなのに。  だがここは心を鬼にして、毅然とした態度で言い返した。   「そんなの、どうにでもするよ。ていうか何だよその上から目線の言い方。自分で何したのか分かってねーだろ」 「分かってるよ……しーちゃんを怒らせちゃって、やっぱり間違ったことしたなぁって……反省してる」  春はまた、肩をがっくりと落として項垂れた。  その姿を見て、許そうかどうか悩んでいた。  1度浮気をするやつは何度もすると聞いたことがある。2度としないと誓えと言えば口ではしっかり言うだろうが、果たしてそれを信じていいものだろうか。だってあんなに「しーちゃんだけだよ」と言われ続けてきたのに。 「相手とは、何回したんだよ」 「い、1回だよ! 信じて! 本当に1度だけの関係だよ!」    怪しいけれど、確かめようがなかった。  1度だけの関係、か。  てことはあれか。酔った勢いでちょっといい雰囲気になっちゃって……とかそんなのか。  春がまさかそんな意志の弱い奴だったとは。  俺は前髪をかきあげ、深くため息を吐いた。 「どのくらい飲んだんだ?」 「え?」 「だから、分別つかないくらいに酔ってたから、そいつとヤっちゃったんだろ」 「ううん、飲んでたけど、全く酔ってはないよ」
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