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星の降る音が聞こえる砂漠の真ん中。
小さな家の中で赤子を抱き、聖女と呼ばれた女は語りかける。澄んだ瞳で母を見上げる赤子は、言葉を理解しているかのようにくうくうと声を出していた。
「あたしも、あたしのお母さまに習ったのよ。大切な人間を見つけたら、すべてを捧げる勢いで相手に寄り添いなさいって」
「人間は、愚かで純粋で、欲深く謙虚で、冷たく温かく、意地悪で優しい生き物。その矛盾を全部受け入れるのよ。怒らず騒がず焦らずに、にっこり笑ってね。相手が喜ぶなら少しは焼きもちを焼いてもいいわ。ああ、焼かせてみるのもね。でもやりすぎは禁物よ。あたしたちの愛はね、重すぎるらしいから」
「え、それでも最後までいいように扱われて、自分に振り向いてもらえなかったらどうするのかって? そうなったら、最後の手段をとるしかないわね。そうよ、その大きなお口を開けてぱくりと呑み込むの」
ひとりごとのように見えて、どうにも会話は成立しているらしい。きゃっきゃっと赤子は機嫌よさそうに目を細める。小さな口から見える、可愛いらしい牙をちょんと指ではじきながら、女はくつくつと喉を鳴らした。
「やだあ、とんだ悪女だなんて。性格が悪いのはお互いさま。それでもあんたのことは、ちゃんと探し出してやったでしょう」
「でもね、どんな形でもひとつになれたなら、それはきっと涙が出るほど幸せなことだと思うのよ。あんただってわかってるくせに」
隣で眠る王太子の首に甘く歯を立てながら、女は歌うように笑ってみせた。
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