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35 アレス、いくらやっても入りませんよ?
オークションの翌日。
ふわふわした気分のまま体を起こす。
2人は珍しくまだ寝ている。
今日は先にバスルームで支度を整え終わる頃には、2人も目覚めたようで恥ずかしそうに僕と入れ替わりで身支度を整えていた。
「今日からどうしましょう」
「私、落ち着かないよ」
2人もまだ昨日のことがあって戸惑っているようだ。
「とりあえず、大迷宮の休憩ポイントを目指して無理せず潜っておこうよ。大金が入ってくるとは言え、宿代を稼がないとその前にお金が無くなっちゃう」
「まあ、そうですよね」
「美味しい物もいっぱい食べたいし、体動かしてすっきりしたい!」
こうして、手書きのマップを頼りに11階層までさくっとたどり着いた。あまり狩りもできなかったのでスキル玉はでなかったし、レッドバッファローにも遭遇しなかった。
というか出現階層の8~10階層は混雑してて狩りどころではなく、収穫はレベルは一つ上がったのみだった。
一応泊りの用意もしてあるので、手前の階段を陣取り夕食を食べ、もう少し進んでみることにした。
「ここからは森と岩場があり、オーガ、ポイズントロール、エルク、ビッグボアが出現します。オーガ以外は初めてなので楽しみですね」
「そうだね。スキル玉も良いけど能力玉出ると良いんだけど…」
僕の言葉に2人もうなずいている。
「稀にオーガキング、キングトロール、ゴールデンエルクが群れを作っているようですので、ぜひ狩りたいですね」
「ゴールデンエルク…お肉が美味しいって聞いた!」
リーゼが口元を拭う仕草をしている。どこ情報だろうか。
「じゃあ、お肉を求めて!」
その言葉に2人も元気よく返してくれた。
結局、12階層へと続く階段で泊まることになった。
11階層だけで運良くなのかオーガ、ポイズントロール、エルク、ビッグボアと通常湧きする4種の魔物を狩ることができた。
オーガからはさすがにちょっと狩ったぐらいでは何もでなかった。
ポインズントロールからは予想はしていたが[毒耐性]が2つほど獲得できた。
エルクからは[突く]を3つ獲得することができた。お肉欲しさにかなりの数を狩った成果だろう。これで[突く]がLv4+3となりあと一つでLv5になる。今でも十分強いスキルなので尚更楽しみだ。
ビッグボアからはこれも予想通りであったがワイルドボア同様に[突進]を2つ獲得した。死にスキルだとは思うがまあ良いだろう。肉は大味だかそれなりの量があるのでほどほどの値段になる。
こうして12階層へ続く階段で毛布にくるまりいつもの様に夜を明かす3人であった。
――――――
Up [毒耐性/Lv4+3/毒に対し一定の耐性]
Up [突く/Lv4+3/強烈な一撃]
Up [突進/Lv3+1/強烈な突進攻撃]
――――――
「今日は休憩ポイントまでは行きたいよね」
「そうですよね。一応もう一泊はできるよう食料はありますが、袋もそれなりに埋まりましたので、あまり狩り過ぎると素材を捨て置くことにもなってしまいますし…」
やはり魔法のバッグは欲しいと思った。
「でもエルクは狩ろう!」
「まあ、そうだね」
リーゼはエルクを早く食べたくて仕方ないようだ。魔道コンロなどがあれば焼肉で減らしてしまいたいが、早くオークションのお金が入らないかなと思ってしまう。
極力エルク以外は狩らないように上へと目指す。
お昼休憩を挟み、ようやく18階層でゴールデンエルクが出た。
取り巻きのエルクが20体ほど。リーゼが涎を垂らしそうな表情を浮かべながら走り出していた。そんなリーゼが群れに突っ込む前にクラウが[風牙]を、僕が[竜巻]で蹴散らしてゆく。
狩りもらしたエルクをリーゼが切り裂いてゆく。
そして残ったゴールデンエルクが、リーゼの[斬]によって首が刎ねられる。そして浮かぶスキル玉。リーゼは嬉しそうにつんしていた。
―――スキル[統率]を覚えました。
[統率/Lv1/仲間の力を底上げする強いリーダーシップ]
僕は取り巻きのエルクの上に浮かんだ2つのスキル玉をつんしながら、その新しいスキルにガッツポーズしていた。
―――スキル[突く]がレベルアップしました。
Up [突く/Max+1/強烈な一撃]
そしてエルクから獲得した2つのスキル玉により[突く]がMaxという表示になったことを確認し、驚きすぎて「うひょ」とちょっと変な声が出た。
「アレス、変」
「面白いスキルでも出たのですか?」
2人が寄ってくるので、[統率]スキルの事と[突く]がMax+1となったことを話す。
「では、スキルはLv5が上限なんですね。教会の書物にちらりとそんなことが書いてありましたが…Lv5なんて過去に聞いたこと無いですしタダの憶測だと思ってましたが…凄いことですよね」
「そうだよね。早く検証したいけど…まずはこれを解体しようかな」
僕は周りに倒れているエルクの群れを見てちょっと面倒に感じてしまう。だがこれだけあればそれなりのお金になるだろう。今日は戻ってエルク肉でパーティだなと思いなんとか解体する気力を絞り出した。
「アレス、いくらやっても入りませんよ?リーゼも…」
「そうだけど…」
「お肉ぅー」
魔法の袋が満杯になってしまい、入りきらなかったお肉を強引に袋に押し込めてみる僕とリーゼ。当然そう言う問題ではないので容量いっぱいになった魔法の袋はうんともすんともいわない。
ゴールデンエルクの立派な角と毛皮、お肉は最優先で入れたものの、エルクの角とお肉はまだ10体分以上転がっている。一応普通のリュックにいくつかは詰まるだろうけど戦いにくくなっちゃうんだよね。
いっそボア肉を捨てて行く?しばし考えていた。
「おい。あの時のガキじゃねーか。ゴールデンエルクに当たったのか?」
遠くから投げかけられたその声で5人の冒険者が近づいてきたのが分かった。一応警戒はしておいた。
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王都の大迷宮・ユルレイヒル大迷宮/11~20階層
平原に森と岩場が広がっている。出現するのはオーガ、ポイズントロール、エルク、ビッグボア、稀にオーガキング、キングトロール、ゴールデンエルクが出る。かならず手下の数名と共に拠点を作っている。
ポイズントロール
でっぷりした3mほどの体。薄紫の見た目で大木を削ったような棍棒を持っている。その棍棒を振るうたびに腕にべっとりついている毒液が一緒に飛ばされる。その液にふれるとかぶれ、痺れが出るので要注意。所持スキルは[毒耐性]。素材は魔石とその近くにある毒の発生器官。
エルク
3つ又ぐらいに別れた大きな角を持つオレンジがかった毛並みの鹿の魔物。その角と美味しいお肉が取れる人気の魔物。角を前に突き出し突進してくる。所持スキルは[突く]なので、急加速からの大ダメージには注意が必要。
ビッグボア
猪突猛進な3m越えの猪。そのおでこは少し出っ張っており岩のように固い。固有スキルは[突進]で、素材としては魔石はもちろん、毛皮も買い取ってくれるが単価は安いので捨て置かれることが多い。お肉は固く、美味しく頂ける部分はそれほど多くはない。
ゴールデンエルク
エルクの群れを形成して移動している。エルクより大きな体に立派な角を持つ。その毛皮は金というより薄い黄色。所持スキルは[統率]。エルクより上質なお肉と立派な角、魔石が取れる人気の魔物。遭遇することは稀であるが、出会うことができれば取り巻きのエルク共々狩りつくしたい。
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