38 席が足りないんだから、仕方ないよね?

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38 席が足りないんだから、仕方ないよね?

「よう!アレス!」 「ニックさん!」 食堂の入り口でニックさんに声を掛けられた。 その後ろにはザックさんにレイリアさんもいた。そしてガリウスさんもいた。話を聞くとガリウスさんたち『竜の双牙』も、ザックさん達が誘われているクランのメンバーらしい。 そして食事を頼み以前使った談話室へ持って来てもらうように伝え、僕たち3人とザックさん達3人、それにガイアスさんのパーティの5名で一緒に食事をとることになった。 一応10名利用の部屋ではあるが、それほど狭いという感じでは無かった。 「席が足りないんだから、仕方ないよね?」と言いながらレイリアさんの膝の上に乗せられたが、クラウが予備の椅子があることに気づいて自分たちの席の間にその椅子を置いた。 「狭くなっちゃうじゃない」と文句を言いながらも僕を解放したレイリアの腕の中から逃れ、その席へと座ると、2人が両脇からギュッと腕を絡ませてくるので、周りの目もあり恥ずかしさで顔が赤くなる。 当然周りからはニヤニヤとした視線が送られていた。 ザックさんからオークションの話になり、それを聞いたガイアスさんから「アレスくんがあの白魔石の提供者だっただとはな!」と驚かれた。 そしてクランの話になり、ザックさん達から真面目で良い子なんだと紹介されていたようで、ガイアスさんから僕たちもそのクランに誘われることになった。 ザックさん達も参加を決めたその『ユルモンドの太陽』というクランは、子爵家が支援するクランなのだと言う。ただし子爵様の言いなりになるわけでは無く、依頼があれば優先的に動くというものらしい。 すぐには決められないので「少し時間を」と答えておいた。 貴族が絡むなら多少のしがらみが出来てしまうだろう。ザックさんたちと一緒にまた狩りをしたいけど僕のスキルのこともあるし、そんな事を思うと躊躇してしまう。それに2人ともちゃんと話し合う必要がある。 ガイアスさんからは「いつでも声を掛けてくれ」と言われ、今日はこちから遺跡へ行くという2組とは別れ、僕たちは大迷宮へと向かう。 移動中も2人とはクランの話になり、結局今は考えないようにしようという結論になった。目標はこのまま3人で自由に生きることと決めていたから… ◆◇◆◇◆ その日も順調に階層を上げて行く。 夕刻には30階層までたどり着くことができた。 改めて意識して検証すると、2人ともやはりスキルの威力や身体機能にいたるまで、かなり底上げされたように感じるらしい。Lv1の[統率]でそうなのだから、もう一つでも挙げればさらに底上げがあるのだろう。 他の群れで出現するタイプの魔物も、[統率]を持っていないか気になるところだ。 ここまでの階層で、アイアンゴーレムからはさらに1つの『硬』の能力玉を取得した。 マジックパペットという木の人形からは[魔奪の肢体]という攻撃で魔力を少しだけ奪い取るというパッシブスキルのスキル玉を2つ取得できた。 そのスキルの効果であろうがリーゼがマジックパペットに攻撃を仕掛けると微量に魔力が減るという。その為、マジックパペットについては僕とクラウが遠距離で仕留めるようにしていた。 また、ブラッドゾンビという腐った死体、いわゆるアンデットモンスターでもあるそれは、クラウが[火炎]で遠距離から全て燃やし尽くしていた。毒持ちとのことだったが、特にクラウがその見た目を怖がり、見つけ次第殲滅していた。 また[毒耐性]かなと思っていたが、[恐慌]という新しいスキル玉を3つ獲得できた。使うと魔物たちが混乱するように動きがおかしくなるので、きっと恐慌状態に陥らせる効果があるのだろう。 消費魔力は10と少し多めだった。 リーゼからのリクエストもあり、2人に向かって使ってみると顔を歪めて僕に縋り付いてきたので、急いで[回復]を掛けると落ち着いた様子に戻った。 何か幻覚とかが見えたりという効果はないが、何とも言えぬ不安が押し寄せてきて思わず縋り付いてしまったらしい。人に向けては使わないように気を付けようと思った。 時折、天井近くをふわふわ浮かぶレイスを見かけたが、僕の[カマイタチ]や、クラウの[火炎]や[風牙]、さらにはリーゼの[斬]でも干渉することは出来ないようだった。 これは聖魔法かな?と思って[回復]を使うと、その緑の光を吸収するようにレイスが口を尖らせた後、スッと消えて行った。スキル玉も素材も落とさなかったので倒したというわけでは無いようだ。 特に漂っているだけなので無視して進むことにした。 リッチは一度だけ遭遇したが、[疾風]で近くまで飛び込んだ頃には、3体のスケルトンを召喚して消えてしまった。発動した[突く]が空振りとなり転がるように壁へと体を打ち付け外殻を大きく削ることになった。 召喚されたスケルトンは、朽ちかけたような剣を握って攻撃を仕掛けてきたが、うっぷんを晴らすように[竜巻]を打ち込んでまとめてバラバラにした。スキル玉が1つ出たのでつんすると、久しぶりの[剣術]が出たので、できればもう一つ確保したら剣術がLv3になると思い、さらなるリッチを探したかったがすぐには見つからず、今は先へ進むことを優先させた。 ちなみにスケルトンが持っていた朽ちかけた剣は、その体と一緒にバラバラに砕け散っており、散らばった骨の中にある魔石を回収するのみであった。 こうして30階層まではたどり着いたものの、かなり広範囲を探索しながらだったため魔法の袋に余裕がなくなったので帰還札で帰ることとなった。次回は真っすぐ31階層を目指すことにしよう。 その中身のほとんどはマジックパペットの体だ。その体は大きくはないが、手すりや杖、棚の一部などに使うと長持ちするのでそれなりの値段で売れると言うので、解体せずにそのまま袋に入れてある。 そして戻った僕たちは、今回の狩りでそれなりに稼げただろうから、オークションのお金が振り込まれるまでの3日間をお休みにしようと話していた。そして解体所に素材を吐き出してゆく。 3人の魔法の袋から吐き出された大量のマジックマペットに、解体所のおじさんも苦笑いしていた。魔物だまりの部分に大量に湧いていたりしたため、多分50体ぐらい狩ったと思う。 そんな僕たちの背後から急に大声で怒鳴る声が聞こえ、僕は体をびくつかせながらも振り返るのだった。 ―――――― アレス クラス:大盗賊 Lv49 体力300 魔力200 外殻280 力40 硬38 速11 魔23 ―――――― Up [剣術/Lv2+1/剣の扱いがうまくなる] New [魔奪の肢体/Lv2/魔力を吸収する障壁を纏う] New [恐慌/Lv2+1/恐怖を植え付ける悪意のあるオーラを放つ] ―――――― ------------------------------------------------------------ ユルモンドの太陽 王都の南に位置する地方都市、ハダネス子爵領の子爵様が支援するクラン。活動は20年ほどで現在ガイアスたちの『竜の双牙』を含む4つのパーティが参加している。今後はザックさんたちの『風の旅団』が加わることが決まった為、5つのパーティが参加することになる。子爵様は温厚で依頼の方も年に数回しかないが、資金集めに奔走しているらしい。収益の1%を子爵様に上納する言うので、貴族の後ろ盾のあるクランとしては破格の待遇ではあるようだ。 王都の大迷宮・ユルレイヒル大迷宮/21~30階層 マジックパペット カタカタと動く木の人形。固有スキルは[魔奪の肢体]という攻撃で魔力を少しだけ奪い取るというスキルを持ち、剣などで攻撃しても魔力が微量だが吸い取られる。素材としては小さな魔石と、その体は大きくはないが、手すりや杖、棚の一部などに使うと長持ちするのでそれなりの値段で売れるらしい。 ブラッドゾンビ いわゆるという腐った死体なアンデットモンスター。固有スキルに[恐慌]を持ち、それをくらうと何とも言えぬ不安が押し寄せてくると言う迷惑なスキル。スキルの消費魔力は10。素材は魔石のみ。 レイス 時折、天井近くをふわふわ浮かぶ白っぽい半透明の球体。顔などはない。スキルなどの干渉が出来ないが基本無害。聖魔法での攻撃が有効で、[回復]程度のスキルだと逆にその魔力をチューチュー吸い取られてスッと消えてしまう。今のところ倒した場合はスキル玉や能力玉が出るかは不明。倒すと魔石だけは出るらしい。 リッチ 遭遇すると、間髪入れずにスケルトンを召喚して消える、素材は魔石と稀に魔鉱石を落とすらしい。スキル玉や能力玉が出るかは今のところ不明。 スケルトン リッチに召喚される朽ちかけたような剣を握った骸骨。一定の攻撃を受けるとバラバラになり素材として魔石が落ちる。固有スキルは[剣術]。強くはないが、時折リッチにより10体ぐらいを召喚されることもあるので要注意。
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