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39 僕もいい加減、夕飯食べて早く寝たいので
「おいガキども!昨日は良くもやってくれたな!」
解体所で僕たちの背後から急に大声で怒鳴る声が聞こえ振り返る。
入り口の付近に見覚えのある3人が仁王立ちしているのが見えた。また面倒ごとかとため息が出た。
「お前のせいで大恥をかいた!どう責任を取ってくれる!」
昨日、大迷宮の入り口や休憩ポイントで絡んできた冒険者たちだった。
「先に絡んできたのはそっちでは?」
理不尽なその男の言葉にもなるべく丁寧に返答をしておく。両隣からは「そうだ」「そうよ」と2人の声も聞こえてきている。
「どこまでもクソ生意気なガキだ!実力もない癖にチョロチョロと狩場を荒らしやがって…」
男は顔を真っ赤にして床をダンダンと踏みしめている。
「言っちゃなんだが、少なくともお前たちより丁寧に狩れてるようだぞ?」
解体所のおじさんの一人がそう言うと、周りから何人かの笑い声が聞こえた。それにつられて笑いそうになったので、慌てて口元を押さえる。
「くっそー舐めやがって!おいガキ!決闘だ!ブロンズ級の冒険者の力、思い知らせてやんよ!」
「えー」
僕たちも同じブロンズ級なんだけどな、と既視感を感じながら肩を落としうなだれ僕に、男たちが近づいてきている。これはまた避けられない流れなのだろうか?
「アレス!頑張って!」
「そうですよ!コテンパンにしちゃってください!」
良い笑顔でそう言うリーゼと強気な発現のクラウだが、もしかしてまた一人で戦うの?そうは思ったが、昨日は[睨む]が良く効いていたようだし、魔力の方もそれなりに回復している。
問題ないだろうと思ってはいる。
そう思っていた僕は、鼻息荒く睨んでいる男越しの入り口付近に、リオールさんと恰幅の良い年配男性が話をしているのが見えた。あのおじさん誰だろう?
「よし!テドルスキたち3人とアレスたち3人!その決闘を認める!とっとと戦って終わらせてこい!」
どうやらあの男性はギルドマスターかそれに類するお偉いさんのようだ。
「よし!ギルマスから許しがでたぞ!何を賭ける!」
「えっ、何か賭けるの?じゃあ何でもいいけど…そうだ、僕が勝ったらもう付き纏わないで下さいね。お願いしまーす」
あの男性はギルドマスターさんだったのか。と思いながら男に丁寧に頭を下げる。もう本当にかかわらないでほしい。面倒くさいです。
「クソガキが!分かった!お前なんかが勝てたら金輪際かかわんねと約束してやんよ!じゃあ俺たちが勝ったら…その女二人は俺たちのパーティに入ってもらう!いいな!」
「いや、やだよ」
思わず即答で拒否してしまった。
「いいよ!」「いいわ!」
2人がハモっている。僕が負けることを考えてないんだろうなとため息が出た。
「おい、お前嫌われてんぞ?女たち即答じゃねーか」
そう言って笑うそのテドルスキとか呼ばれてた男。背後の2人も同じように笑っていた。あまり手加減できないかもしれないと感じた。どうせならこういう輩が出ないように強めにやっておこうと考えてしまう。
「じゃあ、とっとと終わらせちゃいましょう。僕もいい加減、夕飯食べて早く寝たいので」と煽ってみると、周りからまた笑いが聞こえてきた。
「こいつー!」
今にも掴みかかってきそうだが、そこは周りの目もあるだろう。振り上げた拳をゆっくり降ろしていた。
そんな3人の横を通り過ぎ、ギルマスさんに頭を下げる。
「どこでやったらいいですか?」
「ああ。リオールに案内させる。まあ、死なん程度によろしく頼む」
なるほど、さすがギルマスさん。僕の実力派ある程度把握済みなのかな?そう思いながら笑顔のリオールさんの後についていく。いつの間にか両脇にリーゼとクラウも並んで歩いている。
そして初めて通る通路を案内され大きな扉を開けると、コロシアムのように大きな広場に出た。その広場の周りも段々の観客席のようになっている。
「ここがギルドの訓練場よ」
リオールさんにそう紹介される。さすが王都だと思った。
入り口の脇にある木刀を適当に選び肩に担ぐ。多分使わないだろうけど。
その後、「じゃあ頑張って」と、僕の顔をお胸にうずもれさせたリオールさんに笑顔で送り出され、訓練場の中央まで歩き出す。リーゼとクラウは少しムッとしていたようだが、僕のせいでは無いと思う。
そして不機嫌そうにドシドシと歩くあの3人が到着し、2人は木刀を取ってから3人一緒に中央まで歩いてくる。
「では、はじめ!」
「いやちょっと待てよ!アイツ一人じゃねーか!そこの2人はどうしたんだよ!」
ギルマスさんの開始の合図に3人が抗議している。
「いいから始めろ!」
再び開始の合図を告げるギルマスさん。
「良いから始めましょうよ。こっちは一人だからそっちに有利でしょ?それとも女性をいたぶる趣味でもあるんですか?」
僕の言葉にいつの間にか増えていた観客からも笑い声と野次が飛んでいた。というかどんどん増えている観客、何人かはエール片手に集まってきているようだ。まあ夕刻過ぎてるし、酒のつまみかな?
「お前は…覚悟しろ!あとで泣いても知らんからな!」
そう言うと、ふとっちょな男が何やら2人に手を向けまばゆい光を放っていたので、どうやらバフでもかけているのだろうと推測した。
そしてバフを掛け終わったのか、手から光が消えた男が逃げるように離れていくので、躊躇せず[睨む]を発動させる。逃げる男は硬直していたようだが、他の2人はなんとか堪えているようだ。
身構えていたからか、それともバフが効いているからなのかな?
今度は[恐慌]を使ってみる。人に向けては使わないようにと思ったスキルだけど、こういう輩なら良いだろうと思ってしまった。
手に持った木刀を放り投げ、息苦しそうな表情をしている3人に向かって[疾風]で近づいた。
そしてまずは硬直している太っちょの腕を横から[突く]と、ゴキリという嫌な音と共に吹き飛んでいった。願わくば肋骨なんかまではいってないと良いけど…
「クソがー!」
細いロン毛な男が片手で木刀を振りあげている。スキルなのだろうが木刀にバリバリと雷のようなものが見える。
その木刀は一気に加速して迫ってくるが、[突く]でそれを躱しながら回り込み、地面を叩いたその男の腕にたたきつける。バキッと折れる腕からは飛び散る鮮血とともに骨が…不快感に顔を歪ませる。
それにしてもLv5になった[突く]は優秀だ。思い通りに体が動くので回避しながらの攻撃もできるようになっていた。これだけで冒険者としてやっていけると思った。
不快感を紛らわせるようにそんなことを考えていた僕は、すぐ隣から最後の一人、デドルンとかなんとか言われていた男の拳が迫ってくるのを感じた。僕と同じように木刀を投げ捨てたのだろうか、その拳の棘々しいナックルに合わせるように、僕も棘々しい[岩の盾]を作ってみると、それは一撃で粉砕されてしまった。それなりの攻撃力はあるようだ。
そして岩の破片が飛び散る中、僕は[突く]でそのデルなんとかのお腹を打ち抜いた。
打ち抜いた瞬間、デルは体をくの字にさせて吹き飛んでゆく。そして5m程先にドタッと落ち、動かなくなった。死んでないよね?
あまりの威力にちょっとだけ心が痛んだ。
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Cランク・ブロンズ級の冒険者パーティ『王都の竜』
テドルスキ
『王都の竜』のリーダーで闘士クラス。スキンヘッドで長身マッチョ。腕には棘々しいナックルを装備。黒いインナーに黒いレザーの袖なしを着込んでいる。下はもちろんレザーのパンツである。[突く]による速攻と[ダブルアタック]という拳による2段攻撃が基本パターン。
グロイサス
黒髪ロン毛、両耳には魔道具である雷型のピアスをしている自称イケメン。雷操者クラスというレアクラスを授かっているため性格がひねくれてしまったとのこと。赤い刺繍がうるさい黒いローブを着ている。黒いインナーの上には銀のチェーンメイルを着用。[雷撃]と[雷脚]を使っての速攻攻撃を繰り出す。
ダンコン
アレスより少し高い程度の背丈のおデブさん。オーダーメイドの黒ベースな祭服に身を包んでいる。神官クラスで[治癒]はもちろん[祈り]という全能力アップのバフかけるスキルも持っている。戦闘中はその大きな体を隠すようにして遠くから2人を支援するのが基本。
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