エピソード⑭

1/1
前へ
/15ページ
次へ

エピソード⑭

 昨日よりも強くなっている魔物と戦いながら、ジレーネ達は進んで行く。  先行するのは相変わらずウィルフレッドだ。その横をリヒトが口から青い炎を放つ。援護に回りながら、ジレーネは風魔法を放つ。  そうして、襲い来る魔物達を倒しながら突き進む。  この山を攻略すれば、復讐の相手フレドリクがいるケイオス帝国だ。  自然とジレーネの気も引き締まる。だが、進むに連れて強くなる魔物達が邪魔で思うように進めない。 (くっ! この程度で挫けるわたくしではなくってよ!)  焦っても仕方ないのだから、的確に倒して行くのが吉だろう。 「阻むモノは、全て……!」 「ジレーネ様、少しお下がりください。距離が近すぎます」  ウィルフレッドに諭され、冷静さを取り戻したジレーネは少し後退する。入れ替わるようにリヒトが前に出て、炎を放った。魔物達が怯んだスキを突いて、ウィルフレッドが斬り刻んで行く。トドメにジレーネが、雷魔法を放ち何体もの魔物達を灰にした。  だいぶ連携が取れて来た二人と一匹は、このまま進んで行く。  先に待つのは、この山の主とも言われている強大な魔物だ――。  **** (強大な魔物の気配がしますわね……)  山頂近くまで来たジレーネ達は、一旦立ち止まる。この先に、山の主がいると確信したからだ。 「どう致しましょう? 作戦無くして、危険ですわね」 「何かお考えがあられるのでしたら、従います」 「ウィルフレッド……貴方には何かなくって? わたくしは戦いについては素人でしたのよ? 貴方こそ、作戦が練られるのではないかしら?」 「ジレーネ様のご意向のままに」  どこまでも淡泊なウィルフレッドに、苛立ちと寂しさが募る。だが、それを本人に伝える勇気はなかった。 (心の距離が遠いのが、こんなにも切ないだなんて……知りたくなかったですわね) 「でしたら、ウィルフレッド。貴方に作戦をお願いしたくてよ? お願い出来て?」 「かしこまりました」  一度魔法で結界を張り、様子を見る。山の主たる魔物の属性等、少しでも情報が欲しいからだ。リヒトの固有能力の一つを使用し、山の主について探る。  そうしてジレーネ達は気づいた。 「ウィルフレッド……これはもしかして?」 「おそらくは。どう致しますか?」 「そうですわね……対話が出来るものなのかしら?」 「出来るものもいるとは聞きます」  ジレーネに緊張が走る。  何故なら――山の主が、魔物の中でも最上位種の一つ。竜だからだ。  それもおそらく、神格クラスの――。 (これほど禍々しい中に、何故竜が? そこも含めて……対応するしかありませんわね……)
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加