黄色のバスに揺られ異世界へ

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◆  わたしはアリナ.モリーナ。グリーン王国では今年六歳になる。  そんなわたしは実は地球人でした。日本では熊元(くまもと)安梨奈として生活していた。当時十八歳だった。  地球の両親はわたしが六歳の頃に離婚した。そして、父親も母親もわたしを引き取らず捨てた。そんな親から捨てられたわたしを叔母夫婦が嫌々引き取った。  それからのわたしには辛くて苦しく悲しくてたまらない生活が待っていた。  叔母は、「タダ飯食い」とわたしに何度も言った。「お兄ちゃんと久美代(くみよ)さんは何を考えているのかしらね……わたし達に安莉奈を押し付けて」とブツブツ呟きわたしをジロリと見る。  叔父も「この家が狭くなったな」と言ってわたしの顔をチラッと見た。  この家の実の娘であるわたしと同い年のイトコ富菜(とみな)ちゃんは「安莉奈ちゃんと同室なんて最悪だよ」と言ってわんわん泣いた。  この叔母夫婦の家にわたしの居場所なんてなかった。  わたしが成長するにつれて叔母さんも叔父さんもますます冷たくなる。明らかにわたしは邪魔な存在らしい。  同じ小学校に通うイトコの富菜ちゃんは「この子タダ飯食いの安莉奈ちゃんなんだよ〜」なんて言ってクラスメイトに言いふらす。なんて意地悪なんだ。  そんなわたしのあだ名は『タダ飯食いの安莉奈ちゃん』になったのは言うまでもない。しかも気がつくと安莉奈ちゃんが消え『タダ飯食いちゃん』になっていた。  その後の人生も最悪だった。  わたしは平凡な家庭に生まれ両親から愛される。ただ、普通に親から愛されたい。願いはそれだけなのに……。みんなが当たり前に持っている小さな幸せさえ手に入れることできなかった。
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