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「ロザリア! お前は私の婚約者という肩書を持つのを良いことに、このリリアに対して悪辣なイジメを繰り返し、取り巻きを使ってしまいには食堂前の階段から彼女を突き落とすという愚行まで犯したらしいなッ!! よって・・・」
「ハイッ! 殿下質問です」
皆が固唾を飲んで見守る中、突然ハキハキした声がホール中に響き渡った。
「「「「「「・・・」」」」」」
誰あろう、先程王子が婚約破棄を申し渡したロザリア・フォンド公爵令嬢の保護者であるフォンド公爵その人の朗々とした声であった・・・
「先程から仰っている『ロザリアとの婚約破棄』は本気でしょうか?」
×××
学園の卒業パーティーを間近に控えたある日の事だ。
急遽国王の私室に呼び出されたエドモンド――こういう時はタメ口で答えろという厄介な合図である・・・
『だからさー、エド。フォンド公爵家に婿入りさせた理由は君がクソが付くほど真面目だったからだけじゃ無いんだよねえ全くもって君ってば理解してないでしょ~』
御歳40歳には全く見えない若々しいイケメン陛下はニヤニヤ笑いながら遠慮無く彼の肩に手を置くと痛いくらいの力を込めて鷲掴みにするが、そんな程度ではエドモンドの立派な筋肉に押し返されてしまうだけで彼自身は痛くも痒くもなさそうだったため陛下は若干残念そうに眉を顰めた。
『君は根っからの騎士だ』
『はぁ』
『どんな場においても守らなければいけないものが判るはずだよね』
『はぁ、そうですね陛下』
『僕は君をフォンド公爵家に婿入りさせたいんだよね。君ならこの国の食を支えるあの公爵領を守っていけると思ってるからね』
『たしかに我が領はこの国の穀倉地帯の殆どを含む広大な土地を抱えておりますが。それと陛下、私は既に婿入りしている身なのですが・・・』
現役の近衛の頃からだが、時折陛下は謎掛けのような物言いをして自分をからかう時があった。
今回も一体何のことだか彼には解らない。
『そして僕は根っからの『国王』なんだよね。要するに『国民の父で』あって、家人にはなれない』
そう言いながら彼は溜息を吐く。
『?』
不思議な事に陛下の微笑みは少しだけ寂しそうにエドモンドの目に映った。
『兎に角覚悟しておいてくれる?』
『わかりました』
エドモンドは国王に向かい正式な騎士の礼を見せ、それを見た彼は満足そうに頷いた。
先日の記憶がエドモンドの脳裏を一瞬掠めた後、彼は壇上の王子とその愉快な? 仲間たちに視線を戻す。
×××
因みにこのゲーム。
攻略対象全員とヒロインがキャッキャウフフの仲、つまり逆ハー状態になれば裏ルートへと突入する仕様だ。
正規ルートは学園モノっぽく匂わせ程度のお色気シーンスチルしかないが、裏ルートに突入するといきなり攻略対象者が大人の男性になる為なのかエロ・・・まあ、要は大人の男性とヒロインとのあられも無い姿の絡みのスチル・・・ゴホン・・・が手に入るのだ。ここからが本番と言った所なのだろう・・・ あのゲームに関してはそういう声が多かった筈だ。
な~んか掲示板で炎上してた覚えがある・・・あの角度が、とか表情がとか・・・今思い出すと恥ずかしい限りである。
自分自身もそれに混じって書き込みをした覚えがあるからだ・・・今更だが思い出すと身震いするのが本音だ。
実は裏ルートの攻略対象者は逆ハーで攻略した相手の親族、つまり親兄弟。
竿兄弟ならぬ竿父子? 親子丼モノ設定?・・・
だめだこのゲーム企画したヤツ全員打首獄門でも良いんじゃね?
しかもその裏ルート攻略対象の1人に何故かエドモンド・フォンド、つまり悪役令嬢ロザリアの父親であるフォンド公爵が混ざっているのである。
だから彼女はストーリー上でのお馴染みお節介キャラなのかもしれない・・・だって彼はロザリアの保護者だからだ。
娘を断罪した側のヒロインと恋人になるとかどんな鬼畜仕様だよ、オイ。
ロザリアが可哀想すぎだろよー!
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