ひとりぼっち

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ひとりぼっち

「リアン。ごめん。約束守れなくてごめん」と俺は叫び、リアンを抱きしめた。伝わってくるのは硬く冷たい感触だった。リアンが最後に抱いたのはこんな気持ちだったのかも知れない。  リアンとの出会いが頭に浮かんだ。あの時のリアンはひとりぼっちで世界中の全てから見捨てられたように見えた。そして結局、最期は俺もリアンを見捨てたのだ。ひとりぼっちになんかしたくなかったのに。  どれだけの時間、リアンの亡骸の前にいたのか分からない。気がつけば日が陰ってきていた。そんな俺を見かねたのだろうか。 「アンタ。ちょっと外の空気、吸って来なさい」と母は言い、俺を追い出した。    空を見上げると泣き出しそうな空だった。  行く当てなんて無かった。地元の友人に会おうかとも思ったが、そんな気分にはなれなかった。俺はため息を吐き、歩き出した。
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