いいコにしていたらまた逢えるからね

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いいコにしていたらまた逢えるからね

 女の子が引っ張った先は屋根の外。瞬く間に俺たちはびしょ濡れになった。女の子は濡れるのが気にならないようだった。俺の手を強く握りしめて走り回った。時折、俺の胸を空いている方の手で叩いたり、頭をぶつけたりしていた。長い髪が嬉しそうに揺れていた。  あんまり、女の子が楽しそうに笑うので俺にも伝染してしまい、俺もつい笑顔になってしまった。気がつくと空が明るくなり、雨が上がっていた。  不意に少女は握っていた手を離し、俺の肩に両手を掛けた。一呼吸分、俺を見つめて軽く首を傾げた。次の瞬間、跳び上がり、俺の頬を舐めた。  俺が呆気に取られていると、女の子は走り去って行った。そして一度だけ足を止めて、こちらを振り返った。夕陽にされた少女は淡い金色を帯びていた。 「いいコにしてたらまた逢えるからね!」  そう言い残し、夕靄の中、消えて行った。 「なんなんだ、一体……」と俺は呟いた。「前にもこんな事があったような」  
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