分からない

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今日は放課後自習して行こうかなあ。 一日中彼の言葉が頭から離れなかった。 学年一位の彼からしたら、私なんて最底辺。馬鹿な女でしょう。 なぜだかそれがとても、悔しかった。 「美子ちゃん一緒に帰ろ?」 「ごめん!今日自習室寄っていきたいの」 「おっけ~。じゃあまた明日ね」 二時間ほど休憩もはさまず勉強し続ける。 「わ、分からない」 教科書を開いても参考書に頼っても、いまいち内容が分からない。 春課題考査の結果は、280位だった。320人中だから、ほとんど最下位。 晴村は、勉強だけじゃない。 誰もがうらやむルックスと、運動神経。他人を惹きつける明るい人柄。 私には、勉強しか取り柄がないのに。 何もできない私は、0点の価値しかない人間だ。 先生たちは、なんていうかな。 塾では常に成績トップだったし、こんな結果見せたら幻滅されてしまう。 母にもとても見せられない。 「全然頑張れてない…勉強できない私なんてここにいる意味ないじゃん」 自習室にはあまり人がいなかった。 窓の外ではしとしとと雨が降り続けている。 こんな天候だし、電車もきっと混むだろう。早めに帰らないとな…。 分かってはいるのに、体が重い。 立ち上がりたいのに、上を向きたいのに、私の意思に反するように瞳からは涙が零れ落ちた。 何度見たって点数は変わらないのに。 誰も見ていないのをいいことにしばらく一人で泣き続けた。 だいぶ落ち着いて、諦めもついてきて、席を立とうと顔を上げた。 その時…。 私の目の前にいたのは、頬杖をついてこちらを覗き込む一人の男子だった。 「へ……?」 慌てて机の上の小テストを隠す。 疑問符が頭の中を飛び交った。 「は、晴村君…。なんでこんなとこにいるの」 「雨宮さん。落ち着いた?」 「え、ま、まあ」 だから、あなたは何でここにいるんですか。 見られたよね、確実に。 こんな点数を見て、なんでまだ話しかけてくるの? 私のことを、馬鹿な奴だって笑いたいの? 嫌いだって言ったじゃない。それならわざわざ関わりに来ないでよ。 こんな私のことなんて………見ないで。 「俺が勉強教えようか?」 「え?」 「分からないんでしょ?教えるよ」 同情なんかいらない。 心の底では馬鹿にしているくせに。 学年一位のあなたには分からない。私の気持ちなんて。 「いらない」 「なんで?」 「放っておいてよ。馬鹿は嫌いだって言ったくせに!」
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