帰り道

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 柊斗は冷めたコーヒーのコップを置いて立ちあがった。人間用の椅子に窮屈そうに座り、それでようやく柊斗より少し目線が下になるアルハヴトンの横に立つ。 「こうしたら、分かってくれる?」  身をかがめて、横から唇を重ねた。ぽってりした肉を少し強引に押し開き、中の牙を舌先でつついてから顔を離す。 「ああ、柊斗……」  再び視線を合わせたアルハヴトンの目は、先ほどまでとは違った、ぎらついた肉食獣のような色になっていた。ぞくり、と背筋が震える。濡れた唇の間から漏れ聞こえた吐息が色っぽい。それでもまだ何かに抵抗するように、アルハヴトンは押し返すように柊斗の胸に手を置いた。 「ま、待て、この前は我慢できたが、そういうことをされると私は……」 「俺も……今日は、我慢できそうにない」  頭の上についた、ビロードでできたような耳にささやく。次の瞬間、柊斗は椅子に座るアルハヴトンを跨ぐように抱き寄せられていた。 「ん……んうっ」  少しざらりとした舌が、柊斗の口の中に押し入ってくる。上顎の内側をつつかれ、柊斗の体が反応する。アルハヴトンの背中に手を回して体を密着させると、彼もまた兆してきていることが分かった。小さく声を上げて腰を振ると、互いの熱がどんどん大きくなっていく。  アルとの長い口づけが終わったころには、早くこの熱を開放したいという欲求で柊斗の頭は支配されていた。 「アル……お願い……」  早く、この体を何とかしてほしい。名前を呼びながらしなだれかかると、柊斗の体を抱いてアルハヴトンが立ちあがった。前回と同じように寝室に運ばれる。柊斗を降ろしたアルハヴトンがサイドランプをつけると、柊斗が三人ほど寝られそうな広いベッドが浮き上がった。この前はこんなところまで見なかったな、と枕に顔を乗せると、お日様のような匂いがする。  引きちぎるように服を脱ぎ捨てたアルハヴトンの体は、柊斗の想像していた通り豊かな筋肉に包まれていた。胸元でメダルがきらりと光る。ランプの光が、それぞれの筋肉の割れ目に陰影をつけている。自分もさっき着たばかりのパジャマを脱ぎながら柊斗がそっとその股間まで目を落とすと、そこには黒光りする屹立が頭をもたげていた。猛々しさを主張する大きさに、お腹の中がぐるりと疼く。 「本当に、いいのか、その……」  裸になったアルハヴトンが、柊斗の上に乗りながら尋ねてきた。うん、とその太い首に腕を回す。 「お願い。……抱いて」  答えた瞬間、のしかかるようにアルハヴトンが柊斗にキスをしてきた。蹂躙するように奥まで舌を差し込まれ、枕に頭が沈み込む。 「ん……」 口を塞がれたまま、大きな手に全身を撫でられる。それだけで心も体も蕩けていくようで、柊斗の頭がぼうっとなってくる。くすぐったいような、気持ちいいような感触に柊斗が身悶えすると、その度に互いの屹立同士が触れ合う。 「んんん!」 指先が胸元の突起に触れた瞬間、柊斗は大きく声を上げて身をのけぞらせた。アルハヴトンの口が離れ、塞がれていた口から甘い声が漏れる。 「や、ああっ」 「ここがいいのか。硬くなってるぞ」  からかうように突起を摘ままれ、柊斗はまた悲鳴を上げた。 「わ、わかんな……あうぅ……」  今までこんなに乳首で感じたことなどない。だが、アルハヴトンに触れられるたびに体の奥底をびりびりとしたものが走っていった。その度に屹立が刺激され、敏感になっていくのが分かる。 「かわいいな……かわいい。こんな表情を見せてくれるとはな」  もっと見せてくれよ、と笑ったアルハヴトンは、柊斗の下半身で震える剛直に手を伸ばした。腹につきそうなほど上を向いたそれに指を這わせ、包み込むように握る。アルハヴトンの大きな手中に、柊斗のものはすっぽりと納まってしまった。  ゆるゆると手を動かされ、先端から溢れる蜜を塗り広げられる。 「アルっ……も、もっとゆっくり……!」  柔らかくしごかれているだけなのに、早くも達しそうになって柊斗は泣きそうな声を上げた。アルハヴトンに触られているという興奮なのか、分厚い手のひらの安心感なのか、それともこれが運命というものの力なのか、とにかくアルハヴトンに触られるとすべてが気持ちいい。早く出したい、という体の欲求と、まだ楽しみたいという心がせめぎ合う。 「こうか?」  悪戯っぽく笑ったアルハヴトンは、柊斗をしごく手を早めた。あ、と上ずった声を柊斗が出すと、面白がるように鈴口を押し広げられる。 「ま、待っ……だめっ、アル」 「気持ちよさそうだが?」  びりびりとした熱が腰に溜まっていく。こみあげてくる衝動から逃れたくて、思わず体をよじる。 「だ……だめだってば!」
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